独走Vターン!阪神が5発11点の猛攻だ。38試合目の2ケタ安打で13試合目の2ケタ得点。矢野輝弘捕手(34)が勝ち越し打&8号ソロでネバサレ打線をけん引し、区切りの折り返し70試合目を華々しく飾った。貯金も再び「27」に。横浜戦14連勝。そうそう、ついでに巨人の自力V消滅です。 |
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阪 神 |
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横 浜 |
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勝:伊良部9勝
S:− |
本塁打:金本10号、桧山9号、今岡5号、アリアス16号、矢野8号 |
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顔中をぐるっとタオルでぬぐう。スタンドの熱さに横浜の暑さ。すべてまとめて、豪快な一発攻勢で暑気払い。それでも主役の矢野は、どこまでも控えめだった。「ホームランバッターじゃないからね。まぐれですよ」。そう話すと、もう一度ひたいの汗を手でふく。前日の嫌なムードも、ぬぐいさろうとした。
派手な試合になった。一回の金本を皮切りに、四回に桧山、五回には今岡にも一発が飛び出す。試合の流れは行ったり来たり。そんなよどんだ空気を、グッと抑えたのが矢野だ。4―4で迎えた六回、二死二塁から左前に運ぶ。この試合、阪神に初めて生まれた適時打は、桧山の激走もあり終わってみれば決勝打となった。
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148キロの速球を武器に八回3人で斬る鮮烈デビューのリガン(右) |
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絶好調男はそれで終わらない。サヨナラ打を放った6月17日の横浜戦から、この日までに24打数8安打11打点。七回にベンチでアリアスのアーチを見届けると、イメージが自然とふくらんでくる。6番手・田崎の5球目を、バックスクリーン右にたたき込んだ。
横浜の息の根を止める8号弾。「高めに来たからね」とさらりとかわしたが、本塁打を放った試合はここまで不敗。まさにダメ押しの一発となった。この時点で6度目の猛打賞だが、圧巻は九回だ。さらにダメを押す中前適時打で、今季初の4安打。「そうそうあることじゃないから、うれしいですよ」。笑みが漏れるまでに、“時間”がかかった。
前夜の逆転負けを誰よりも悔いていた。6安打を浴びた久保田は初黒星。マウンドで自分のサインに首を振らないルーキーは責められない。黒星を1人で背負い込んだ。それでも試合後、ロッカールームで「まだ明日があるぞ」と反対に励ましていた。それが矢野という男である。
「明日あるぞと言ったら、本当にあったでしょ」。六回から登板したルーキーが無死一、二塁とピンチを広げたところで、すかさずけん制を挟み二塁走者を殺す。気持ちを切り替えること。ルーキーへの宿題も忘れなかった。
連敗を阻止して貯金は再び27。そして球団記録を更新し続ける横浜戦14連勝。さらに70試合を消化した節目で、くしくも巨人の自力優勝の目がついえた。「これからの70試合がどれだけ長いと思っとんのや」。闘将が飛ばしたゲキ。遅れてバスに乗り込んだ矢野には、聞こえなくても分かっている。(鶴崎唯史) |