夢への助走は、終わった。71試合目。“後半開幕戦”で矢野が首位打者に躍り出た。さらに金本、片岡の働き盛りがオトナの活躍で、対横浜15連勝と蹴散らし貯金も28。まだ足りん!うっすらと見え始めたゴールテープ。逃げ切りなんてケチなことは言わん。猛虎は熱狂の夏を全速力で駆け抜けるで! |
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阪 神 |
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横 浜 |
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勝:ムーア9勝
S:ウィリアムス20S |
本塁打:アリアス17号、矢野9号、平下1号 |
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六回に左越え2ランを放った矢野は打球を見届け雄叫びをあげる |
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小走りの歩調に、トップの実感はない。「それは皆さんが言うこと」。連日、横浜にとどめを刺した矢野は、首位打者という言葉を嫌った。それでも手にした実感には素直だ。「1点では流れが来ない。本当にうれしい一本になった」と34歳には見えない、子供のような笑顔。星野監督いわく「働き盛りの年齢」。試合を決めたのは、そんな働き盛りの男たちだ。
1―1で迎えた六回。先頭・金本の当たりは、二塁手の差し出すグラブの真横でバウンドしたが、とてつもなく速い打球は、そのまま右中間を破りフェンスまで到達する。筋肉をしならせ、一気に二塁へ。35歳にして、球界を代表する剛の男が見せ場をつくった。
二死と場面を変えて、片岡は技の持ち味を発揮した。外角の直球を引っ張り、一、二塁間を突破。金本は迷わず三塁をけり、本塁に突入する。ブロックに入った相川をものともせずに生還。「広島時代に相川にははじき飛ばされたことがあったからの。ベースは見てなかったわ」。しびれた足でしびれる展開を演出。片岡の19打席ぶりの安打を決勝打に変えた。
そして、とどめは前夜のヒーロー・矢野だ。2球目、内角の直球を左翼席まで運んだ。2試合連発となる第9号の2ランアーチで、赤星を1毛差でかわし、首位打者に躍り出た。この回活躍したのはすべて30代。味のある選手が、白星をさらに味付けした。
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七回代打・平下がバックスクリーン横にホームランを放つ |
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片岡には大きな一打になった。試合後も、殊勲のバットを右手から離さない。「年齢は気にしてない。気持ちは若いので頑張るよ」。前日に34歳の誕生日を迎えたばかり。心のもやもやも、多少消えた。
26日の広島戦(大阪ドーム)には、地元・京都から両親を含めた90人が応援に駆けつけたが無安打。さらにPL学園で同期の立浪が、2000本安打達成間近。「高校時代からのいい友達。それ以上のことは打ったときに言うよ」。1日からの中日戦(甲子園)が楽しみとなる復調気配だ。
チームは71試合目となった“後半戦”のスタートで快勝。横浜戦の連勝記録は15まで伸び、今季の勝ち越しが決まった。「矢野?あんなのが入るとは、パワーが付いたんかな」。56歳にして、最も“働き盛り”の指揮官。30代トリオに細めた目にも、Vまでの道筋はしっかり映っていた。(鶴崎唯史) |