区切りの日を迎えました。まさかの黒星開幕から94日目―。未曾有の快進撃で星野阪神が50勝目です。プロ野球初となる6月中の到達に、本紙も特大の「50」で祝福します。優勝マジック最短点灯日は7月4日。あと30回勝とう。 |
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阪 神 |
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横 浜 |
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勝:下柳4勝
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本塁打:アリアス18号、桧山10号 |
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心の奥からわき上がる痛快さを抑えるように、そして周囲を戒めるように、複雑な笑みを浮かべながら星野監督は決然と口にした。
「負け越しているとか、鬼門や鬼門やとか言うてくれたからなあ。これで来年から言われんやろ」
横浜戦16連勝。これまで散々な悪夢を繰り返してきた6月も、今年はなんと15勝5敗と驚異的な強さを発揮。極め付けはプロ野球史上初めて6月にして50勝への到達だ。
チームを前人未到の世界に導いたのは、アリアスの一撃だった。1点を追う四回二死一、三塁、ドミンゴの外角チェンジアップ。打球は一瞬にして左翼席へと達した。6月7本目、3戦連発の18号逆転3ランだ。
「去年は横浜スタジアムで1本も打ってないんだけど、相性はいいかもしれないね。でもどこの球場も打ちやすいよ。甲子園を除いてはね」
本拠地は広い。自然と力が入ってしまう。だからボール球にも手を出す。「ストライクを打てばあいつはホームラン王も獲れるし、3割もいける」と、闘将が心配するのもその点だけだ。
今季これまで甲子園では4本、それ以外で14本を放っている。「他の球場は大きいのを狙って打つ、という気持ちがなくても打てるんだ」。チーム無双のパワーヒッターだが、精神面が打撃に直結しやすいタイプでもある。
アリアスのバットには、実はおまじないがかけられている。もともと調子の波が激しく、打てないときは悩みまくる。その結果、さっぱり当たらなくなる。まるでバットが眠ってしまったかのように…。
「メヲサマセ」
バットを指さし、日本語でこうささやく。もう何度も言っているから、発音は抜群だ。この儀式をすれば不思議と打てる―こともある。
こんな陰の努力?も、チームの快進撃を支えてきた。「目標は1つだけだ。僕が(打率)1割台だった時も応援してくれたファンのためにもね」。史上最速50勝はゴールじゃない。その先にある目標に向かって、まだまだ走り続ける。
「7月からもいまの姿勢で、その日暮らしでいく。何度聞いてもコメントは変わらんでえ」
そう言って笑った指揮官。帰りのバスに乗る間際、好調6月の話題に「負け越してほしかったんか!」と少しだけ語気を荒らげた。どんなマイナスデータも、今年の猛虎には、すべてが血と肉に化すおいしいエサとなる。(岩田卓士) |