七月!猛虎の夏は、桧山のバットで幕開けだ!逆転2ランから始まった主演・桧山の“豪打ショー”には、なんとサイクル安打という結末が待っていた。汲(く)めども尽きぬ得点の泉。横浜、巨人に続き竜の自力Vを消して、貯金はついに30。選手会長の完全復活で、トラの進撃はどうにも止まりませ〜ん! |
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中 日 |
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阪 神 |
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5 |
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3 |
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× |
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14 |
勝:井川10勝
S:− |
本塁打:桧山11号、片岡7号 |
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球団史上4人目のサイクル安打達成。さすが桧山、選手会長だ |
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地鳴りのようなカーテンコールに促され、伝説の男がグラウンドに飛び出す。桧山進次郎―。5万の観衆は、この男だけを待っていた。「走りながらファンの『ワーッ』ていう声援を感じて…。アウトになってもいいから三塁まで走ろうと思った―」。
七回だ。二死一、三塁から中日5番手・山井が投じた134キロを鋭くはじき返す。中堅後方を襲った打球は、ワンバウンドでフェンス上部の金網を直撃。大きく跳ね返り、必死に背走したアレックスの背後を転々とさまよう。もしこれがラバー部分に当たっていれば…。甲子園の神様も、こん身の“援護射撃”だ。
星野監督が振り返る。「クッションがよかったな。ツキが回ってるね」。
三塁に滑り込む桧山。返球は本塁へ。その瞬間、プロ野球史上58人目のサイクル安打が確定した。阪神では79年の真弓以来24年ぶりの快挙だ。藤村富美男、金田正泰―。一時代を築いた伝説の男たちが彩る系譜。そこに「桧山進次郎」の名が、筆太に刻まれた。
「あの打席はとにかくヒットを打とうと思った。みんなのおかげです」
序曲は初回、1点を先制された直後の攻撃だ。野口の内角直球を鮮やかに右中間席に運ぶ逆転2ラン。第2打席は三回、中日2番手・バルガスの速球を見事なバットコントロールで流し打つ二塁打。そして五回には痛烈な右前打で、早々と快挙にリーチをかけた。
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代打で3ラン。片岡も負けじと豪快にダメ押し弾を放った |
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1日が34歳の誕生日。この日の試合前には、スタンドで「HAPPY BIRTHDAY」と書かれたボードが掲げられていた。シートノックでこれに気付いた桧山。ファンの温かい心に触れ、一層の気合を込めた。
チームはこれで51年ぶりの貯金30。そして優勝した85年以来、18年ぶりの対中日6連勝。しかしこの夜の桧山は、そんな記録すらかすませた。
「(最後のヒットは)ファンに背中を押してもらった。これからの試合も、ファンのみなさんとともに戦っていきたい―」。やらかした大仕事と謙虚さのアンバランス。そう、それが桧山。甲子園の神に選ばれし、桧山進次郎という男―。(松下雄一郎) |