東京ドームで中日・立浪が通算2000本安打を達成した日、甲子園では恩師・星野監督率いる阪神がチーム打率3割に達する猛爆でヤクルトを圧殺、破竹の5連勝を飾った。今岡の絶妙セーフティーで勝ち越した後は、もうお祭りモード。立浪選手、1面じゃなくて本当にゴメンね。 |
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ヤクルト |
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4 |
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1 |
0 |
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7 |
阪 神 |
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3 |
0 |
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2 |
0 |
2 |
× |
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13 |
勝:久保田2勝
S:− |
本塁打:片岡8号 |
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泥だらけのユニホームを、誇らしげにぬぐった。一塁ベースに頭から突っ込んだ今岡は、珍しくガッツポーズで気勢を上げた。
「久しぶりに興奮するくらいうれしかった」。これがVロードをひた走る虎の強さ。「ビックラこいたわ。オレも想像しとらんかった。向こうもそうやろ」と指揮官すらも欺いた会心の“一打”は、何と予想もしないプッシュバントだった。
星野監督が振り返る。「クッションがよかったな。ツキが回ってるね」。
藪が沈んだ三回だった。4―6と逆転を許した直後。アリアス、片岡の連打で同点に追いつき、二死満塁。ネクストバッターズサークルでヤクルトの投手交代を見守った。マウンドには3番手・坂元。「どうしてもタイミングが合わないことが頭をよぎった」。今季初対戦。しかし、昨季の対戦成績は10打数無安打と完ぺきに封じられた。「普通にやったら向こうの術中にはまる」と初球に挑んだプッシュは、絶妙な強さで一塁線に転がった。
深く守っていた一塁・ベッツとベースカバーの坂元、いやダイヤモンドを守る全員が右往左往した。自打球を当てて万全ではない足をものともせずに、一塁にヘッドスライディング。勝ち越し適時打は、その後1点以上の大きな重みを持った。
五回だ。二死一、三塁の好機で、打席は今岡。「今日は坂元投手に対する(悪い)イメージが振り払えなかったから、ファウルでもやらないと自分のペースにならないと思った」。あのプッシュバントで、坂元に対する苦手意識は消え失せていた。スライダーをたたき返した打球は、中堅フェンスを直撃したあわやアーチの2点適時打。この瞬間、チーム打率は・300まで跳ね上がった。
七回途中まで保たれた驚異のチーム打率3割は、最終的に・299・96。今岡自身も・360で打率トップを守り、チームは今季4度目の5連勝。ヤクルトの自力Vを消滅させた。広島の勝利でマジックは最短8日に点灯する。
今季2連敗と苦手の佐藤秀の出はなをくじく初回の左前打を合わせて6打数3安打3打点。今季13度目の猛打賞を獲得した今岡が“最強”の称号すら似合うようになった猛虎打線の象徴だ。
誰もが意表を突かれた今岡のバントを、島野ヘッドコーチは「瞬間的に本能でやった」と分析した。本能的な強さを持ち始めた虎を、止められる敵などもういない。(船曳陽子)
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