星野阪神の、新たな歴史が動きだした。快勝ではない。苦しんだ。それでも、大きな意味がある。8日に点灯したマジックが、初めて1つ減った。「48」。しばらく、負けが続くんとちゃうか。序盤の攻防に、嫌な思いがよぎったが、大丈夫だった。三回、一気の3連打で4点。やっぱり強い! |
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阪 神 |
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広 島 |
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勝:ムーア10勝 S:ウィリアムス21S |
本塁打:− |
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技ありの逆転2点2塁打を含む4安打を放ったアリアス |
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また一つ、歴史の針を進めた。苦しみながらも粘りに粘って、Vへの「指標」を初めて動かした。「五回までがしんどかったわな」。最後まで左うちわではいられなかった展開に、指揮官も大きく息をついた。だが、それは覚悟の上。やっとともった優勝マジック。初めから、簡単に減るとは思っていない。
小休止はしても、続けて黒星は並べない。前夜はサヨナラ敗戦。ナイン1人1人の心に、それ相応の振幅はあったはず。だが「夢」に向かって突き進んでいるタテジマ軍団は、それぐらいでは停滞しない。
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代打起用は敵のブロックに先を越されたが2年連続2ケタ勝利のムーア |
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1点をリードされた三回だ。先頭・赤星の右中間二塁打をきっかけに、頼もしき男たちは、勝利への執念を一気に結集させた。金本の四球などで一死一、二塁から、アリアスが高橋の128キロスライダーを、巧みに右中間へと運ぶ。逆転の二塁打を放った立役者は、ベース上で胸元から十字架のペンダントを取り出し、キスをした。ヒットを放った際の恒例行事が、また憎い。
一度、火が付いたら、もう止まらない。片岡、矢野も連続適時打で続き、打線が見事に「数珠つなぎ」である。あっという間に4点を奪い、試合をひっくり返した。波に乗れないムーアにも勇気を与えた、逆転劇。「(四回の)1点以降がアカンわな」。星野監督は中盤から鳴りを潜めた打線に注文も忘れないが、全員でしのぎ切った勝利に、葉巻をくゆらせる表情も、自然と柔らかさを帯びてゆく。
これでマジックは点灯後、初めて減って「48」となった。だが、標榜(ひょうぼう)している1戦必勝のスタンスは全く変わらない。打のヒーローであるアリアスは試合後「ノーコメント」と口をつぐんだ。今季2度目の4安打。それでも笑みはない。六回、二死一塁の場面で、デイビーが投じた初球が背後を通過。それが遠因かもしれないが、1勝ごとに一喜一憂はしない。
試合終了後。指揮官に、虎党から「ホシノ、ホシノ」の大合唱が沸き上がった。左手を上げ、星野監督はしばしファンに応えた。栄光のゴールは、まだまだ遠い。だが、その軌跡はしっかりと見えている。カウントが「0」となるその日まで―。全員一丸で針を進めるのみである。(岡本浩孝) |