男じゃ。これぞ猛虎の男じゃ―。猛爆G倒劇に花を添えた。金本知憲外野手(35)だ。もがき苦しんで17打席連続ノーヒット。迎えた甲子園での巨人戦、そのバットが大爆発する。猛打賞&11号弾でビックイニングを演出し、Vマジックも「47」に。甲子園夏祭り…男・金本の復活祭…熱いゼ! |
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巨 人 |
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阪 神 |
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× |
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勝:藪7勝 S:− |
本塁打:金本11号、矢野10号 |
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それでも自分を戒めた。心は軽くなったが、気を緩めるつもりは毛頭ない。「油断禁物。これ、プロの鉄則よ」。金本は淡々と言葉を連ねていった。会心の一発、久しぶりのヒットの連鎖、そして痛快なG倒劇。だが、一息は付かない。それがこの男の流儀でもある。
ここ1カ月、チームの勢いに乗り遅れていた主砲が、やっと目を覚ました。第1打席で実に18打席ぶりの「Hランプ」を遊撃内野安打で灯すと、失っていたリズムを取り戻す。0―0で迎えた四回。工藤に襲い掛かった猛攻も、金本の一打なくしては語れない。
先頭で打席に入ると、右前に快打をはじき返した。これで打線に火が付いた。一死満塁から矢野が先制の2点タイムリー。藤本、赤星もリード拡大の適時打で続いた。そしてこの回、2度目の打席が、5点を奪ってなお、二死一、二塁の場面で金本に巡った。
カウント1―2からの4球目。外角の133キロ速球を、ものの見事に左中間席に叩き込んだ。自身9試合、46打席ぶりの一発。「10年ぶりに打った感じだわ。忘れていたよ、この感触」。最高の手応えを伝えたアーチは、一挙8点のビッグイニングを完成させ、巨人から追撃の気力を完全に奪い取った。
マジック点灯までこぎつけたチームとは対照的に、金本のバットは湿り続けた。ここ5試合で22打数1安打。3割を維持していた打率も・279まで落ち込んだ。9日の広島戦(広島)終了後には「もう分からん」とポツリ。きっかけをつかめずにいら立ちも隠さなかった。だが、そんな状況下でも、復調への「手立て」は忘れない。
試合前の打撃練習で、こんなシーンがあった。捕手の後で判定の確認をしていた橘高審判に、金本は打ち終えるたび、見逃すたび、自分の判断の正否を問うた。「打てない時はストライクもボールに見えるからね」。今一度、きっちりとゾーンを確認する「原点」に立ち返った。18試合ぶりの猛打賞は、こうした地道な努力と無縁ではない。
マジックは「47」に減った。前半戦最後となる3連戦の頭を、最高の形で飾った。「(打撃の)形は良くも悪くないけど。そんな簡単なもんじゃないよ」。これで復活―とは口が裂けても言わない。それが金本。虎党たちが愛してやまない男はゴールの瞬間まで、決して「自戒」を忘れない。(岡本浩孝) |