容赦しない。シューしてピクピクしているところを、さらに踏みつけてカカトでグリグリするような“いけず”な阪神。きょうももらったチャンスに乗じて二回までに12点。ひん死の巨人を今季2度目の5連勝、40年ぶり2戦連続2ケタ得点と葬り去って、カード18年ぶり勝ち越しに王手。マジックも46やで! |
|
巨 人 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
3 |
|
3 |
阪 神 |
5 |
7 |
0 |
1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
× |
|
14 |
勝:下柳6勝 S:− |
本塁打:沖原1号 |
|
|
|
|
|
歓喜のスタンド、そしてベンチ。本塁打の沖原を迎える阪神ナイン |
|
かつての巨大な敵は、すでに地に堕(お)ちていた。それでも、どう猛な虎はキバをむき続ける。「ああいうミスをすると今のタイガースはこういうふうになっちゃう」。指揮官の声がどこか人ごとなのは、“伝統の一戦”の重みが消えうせた寂しさだろうか。
二回一死、9点目を奪われた巨人・原監督は、先発ラスから真田への交代を球審に告げると、ベンチで腰を下ろした。震える手をごまかすように帽子に手をやり地面へとたたきつけた。怒り、それとも屈辱か―。コンクリートの床でひしゃげた“YG”のマークが、強すぎる猛虎のもう1つの証となった。
相手のスキは、最高のごちそうだ。初回、先頭の今岡が三失で出塁。一死一塁から金本が二失で一死一、三塁と好機が広がった。そして、桧山が右前適時打で続く。簡単に先制しても、飢えた猛虎の“お腹”はいっぱいにならない。
一死一、三塁から5番・アリアス、二死二、三塁から矢野、沖原が続き、打者一巡一挙5点。二回も敵失をからめて桧山、アリアス、八木、沖原らの適時打が飛び出した。一、二回で打者22人、12安打、12得点。五回には先発全員安打も完成させた。三塁側は、投げられるならタオルを投げていただろう。
苦手意識をモチベーションに変える。ラスには5月16日の甲子園で、8回を6安打無得点に封じられていた。田淵チーフ打撃コーチは「1回やられた相手には、2度とやられない。(2連敗後に大勝した)佐藤(ヤクルト)のようにね」。どんな小さな穴も1つずつふさいでいく積み重ねが、虎の鎧(よろい)をまた頑丈にする。
対巨人2試合連続の2ケタ得点。宿敵巨人に対し63年9月3日以来、40年ぶりの快挙だ。巨人に対する2試合連続2ケタ得点差は史上初。しかもこの勝利で85年以来の巨人戦勝ち越しに王手。
「我々が逆にやられていた時代がある。だから(いい記憶を)選手に残してやりたいんだ」と田淵コーチ。一方、星野監督は「たかが1チームやないか」と言い放った。
そして、すぐさまこうも続けた。「でもこの球団にとっては、1チームじゃないよ」。だからこそ虫の息になった相手にも容赦はしない。宿敵との崇高な戦いが、悲願達成への原点であることに変わりはない。(船曳陽子) |