“4タコ”に終わった球宴の悔しさを、一振りで晴らした。阪神の選手会長・桧山進次郎外野手(34)の12号決勝弾で、阪神は後半開幕戦を激勝、マジックも「45」に減らした。球宴は球宴、公式戦こそ俺の出番―。桧山の意地とプライドが融合した一撃で、最強の虎が再びVロードを爆走し始めた。 |
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広 島 |
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阪 神 |
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× |
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勝:リガン1勝 S:安藤4勝2S |
本塁打:今岡8号、矢野11号、桧山12号 |
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頼れる選手会長。試合を決めた桧山を迎える歓喜のナイン |
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夢への折り返し地点を回っても、猛虎を後押しする追い風は一向に弱まらない。やってくれたのは、桧山だ。頼れる選手会長の決勝アーチの向こうに、虎党ははっきり「V」の字を見た。後半戦の白星発進で4連勝。甲子園では9連勝だ。
雨中の激戦にも、勝利への執念が途切れることはなかった。同点の七回表には、降雨により7分間の中断を余儀なくされた。そして八回、先頭の桧山が長谷川の2球目のカーブに鋭く反応した。
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うれしい初勝利。2イニングをピシャリのリガンに待望の初勝利 |
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「うまくフォローの風が助けてくれた。(スタンドへ)行ってくれと思った。先頭打者として、出塁することだけを考えていた」。呼び込んではじき返した打球は、中堅右へ吸い込まれた。
昨季の終盤、選手会長として2年の任期を終えようとする桧山は、今岡に選手会長の座を譲ろうと考えた。しかし「僕にはまだ早い」という今岡の意をくんで、続投を決めた。そして昨オフ、京都市内の実家の両親に、桧山は決意を込めて語った。
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後半戦も切り込み隊長はバッチリ。今岡は今季5度目の先頭打者弾 |
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「自分が選手会長をしている間に優勝したいんや」。リーダーとして困難や問題の矢面には、率先して立つ。しかし、決して派手な場面で自己顕示はしない。そんな男が、ただ1つ描いた華やかな夢だった。
不調に苦しんだ前半戦だが、2割台前半で苦しんだ打率も、6月以降は急上昇。打率・276まで引き上げて球宴に突入した。晴れの舞台では、4打数0安打。「楽しめましたよ」と言うものの、内心は悔しさでいっぱいだった。そんな思いを一撃に込めた。この日の決勝アーチを含めて、桧山が打点を挙げた試合で、チームは16連勝を続けている。勝利への貢献度は、打率以上の数字を残している。
試合前、円陣の中央で口にした。「前半戦と同じようにコツコツと持ち味を出していこう。最後まであきらめないで頑張ろう」。前半戦をブッちぎりで通過しても、試合前の“儀式”は、何も変わらなかった。
「変わる必要もない。僕らは経験もないし、個人個人が競争している。みんなも同じ気持ちですよ」。試合終了後、球場周辺ではいつまでも「六甲おろし」の合唱が終わらない。その声を遠くに聞きながら、桧山はぬれたグラブとバットを手入れして、いつもどおりに次の戦いへ備えていた。(船曳陽子) |