最高っス!夏休み最初の日曜日を劇勝で飾った。延長十一回、一死一、二塁から久慈照嘉内野手(34)がサヨナラ打。土壇場で追いつかれた嫌なムードを、そのひと振りがきれいさっぱりぬぐい去った。優勝マジックも1日で2つ減って「43」に。もう1度言わせて下さい。最高っス! |
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広 島 |
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勝:ウィリアムス1勝21S S:− |
本塁打:アリアス21号、金本12号 |
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土ぼこりがヒーローを包む。追いかけてくるナインを振り切り、歴戦の勇士も久しぶりの歓喜の輪を楽しんだ。倒された目の前には、甲子園の土があった。ここで野球ができる喜びを、もう1度かみしめる。34歳の目じりに、深いしわが1本増えていた。
延長十一回だ。先頭のアリアスが四球を選び、沖原が犠打。矢野は敬遠された。「沖原が送ったときに、矢野さんが歩かされることは分かっていた。初球から悔いの残らないように振っていこうと考えていたよ」。一死一、二塁で打席に向かった久慈は、自分で決める覚悟を携えていた。
その初球。ど真ん中に来た直球を振り抜いた。はじかれた白球は、前進していた左翼手の頭を越える。二塁走者の秀太がかえり、今季4度目のサヨナラ勝ち。選手も一気にベンチから飛び出し、久慈を追い掛け回した。「頭をたたかれて痛かった。でも気持ちよかったね」。仕事をした男の顔は笑みで満たされた。
昨年放った安打はわずかに2本。中日を自由契約になり、たどり着いたのが甲子園だった。92年に入団し、優勝争いを演じた場所。だが、6年間を過ごした“故郷”は、久慈に試練を与えた。右わき腹を痛め、2軍からのスタートとなる。
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技ありの1発。守備でも補殺。金本はやはり頼りになる男だ |
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5月27日の昇格まで長かった。そんな時、92年のビデオを目にする機会があった。「今のチームは92年に雰囲気が似ている。でも今年の方が恐らく強いだろうね」。懐かしい故郷で、Vへのにおいをかぎとっていた。
星野監督も久慈の力は十分に知っている。こんな日が来ることもだ。「あいつが打ったのがうれしい。自由契約になって、いい仕事をしてくれたらうれしいよ。めったにない打席で、チャンスをものにしたんだから」。56歳の闘将にも、目じりのしわが1本増えた。
覚えているだろうか。この甲子園でサヨナラ打を放ったのは96年7月28日、巨人19回戦でマリオから以来のことだ。この日が自身2度目。どちらも甲子園がやさしく包み込んでくれた。
マジックは一気に「43」。「マジックの雰囲気は感じないね。総力戦というか、全員野球を徹底してやっているだけだから」。21日からは、本拠地でヤクルトを迎え撃つ。久慈照嘉の大好きな甲子園である。(鶴崎唯史)
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