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井川 村山実以来の10連勝

阪神5−3ヤクルト
7月21日・甲子園
 

 人間機関車・ザトペック。最強のマラソンランナーに例えられたのが、ミスタータイガースの故村山実氏だった。敵をなぎ倒し、次々と白星を重ねて行く。偉大な大先輩に、阪神・井川慶投手(23)も近づいた。4連続完投で10連勝。虎投では、村山氏以来35年ぶりの快挙で、60勝一番乗。マジックも「41」だ!

ヤクルト
阪 神
×
勝:井川12勝 S:−
本塁打:アリアス22号
打のヒーローを祝福する井川は破竹の10連勝達成

 乾いた黒土に幾粒もの汗が、飛び散った。疲労の結晶を惜しむことなく、左腕を振るう。「5点取ってくれたから完投できた。チームのおかげです」。ハーラートップの12勝目にも会心の笑顔はない。妥協を許さない阪神の井川の姿があった。

 111球の完投劇は、圧巻の投球で幕が開いた。先頭の岩村を1球で二ゴロ。続く宮本、稲葉は、連続で3球三振に仕留める。わずか7球で、初回を終わらせた。

ダメ押しの左犠飛。藤本がいい仕事

 「1球1球大事に、1球目から勝負の気持ちでいったのが良かった」

 毎試合、こだわってきた球数。負担を減らすための戦いは、オフの時から始まっていた。

 自主トレで故郷に戻った際、水戸商時代の監督・橋本實先生(現八郷高)のもとに足を運んだ。「良くも悪くも去年は3球勝負が多かったな」。プロ入り後、何度も悩みを打ち明けた先生の声。「相手も狙ってくる。そういう攻め方をするなら、考えてやらないと」。教え子は素直にうなずき、耳を傾けた。

 長いシーズンを見越した、投球術。ヤクルトの早打ちに対して「それは1球勝負に勝ったということでしょう」と、胸を張った。

早くも15回目の猛打賞となった今岡

 完封とはいかなかったが、4連続完投で堂々の10連勝。「村山さん?知ってますよ。偉大な方ですし、お葬式にも行きました」。阪神での2ケタ連勝は、故村山実氏が68年に記録して以来、35年ぶりの快挙だ。

 優勝への近道―。マジック対象のヤクルトを倒して、マジックは2つ減って「41」。さらにセ・リーグ史上最速の60勝、そして勝率・723は101勝ペースという、記録ずくめの夜となった。

 「ヒヤヒヤさせながら完投したな…ヒヤヒヤじゃないか、今年で一番のピッチングやった」。孝行息子の活躍に目を細めたのは、星野監督だ。

 意外にも、今季初めてとなる甲子園のお立ち台。連勝中、一度上がるように促されたが、それを拒んだ虎のエース。

 「これからも頑張りますので、よろしくお願いします」

 自信を持って歓声を浴びる。1メートルに満たない舞台から周りを見渡すと、また違う景色が、そこにあった。視界は、さらに広がった。(道辻 歩)


激闘ダイジェスト
2回裏 1死から片岡と矢野が連続安打。藤本の右翼適時打で先制。井川の犠打で2死2、3塁。今岡の左翼2点タイムリーで3点を先行
4回表 先頭の宮本が右前打。稲葉の犠打で2進。ラミレス遊ゴロも鈴木が右前適時打
4回裏 アリアスが左翼ソロ。続く片岡が左中間2塁打。1死3塁となって、藤本の左犠飛で5−1とする
7回表 1死から鈴木が右中間ソロ
8回表 代打・度会を見逃し三振。1死から岩村に中堅ソロを浴びる
9回表 ラミレス1ゴロ。鈴木を3ゴロ。古田は左飛で井川が完投勝利

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