神に頭を下げ、仏に手を合わそう。この男にタテジマを着させてくれたことを―。阪神・伊良部秀輝投手(34)が7回10奪三振無失点で、1996年以来、7年ぶりに日本で2ケタ勝利を挙げた。7月勝ち越し。マジック「39」。もしも、伊良部がいなかったら…。だから今夜もありがとう。 |
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勝:伊良部10勝 S:− |
本塁打:今岡9号 |
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「へ」の字に結んだ口から、白い歯がこぼれる。「三振?まあ、アウト取れたらいいですよ」。感覚を研ぎ澄ましてつかみ取った、7年ぶりの日本球界での2ケタ勝利。マンモスから降り注ぐ大歓声を全身で受け止め、伊良部は照れくさそうにはにかんだ。
128球を費やした旅。出発から険しい道のりが待っていた。初対決の先頭・岩村を慎重に攻め、四球で歩かせる。二死後にラミレスに三塁内野安打を許すと、鈴木にも四球を与え、二死満塁。古田を左飛に切って最大の危機を乗り越えたが、右腕の精度は微妙に狂いを生じていた。
思い描く通りのボールにも、判定が食い違う。納得できない感情を押し出す場面も度々あった。それでも、勝負どころを熟知する伊良部は崩れなかった。
「三回ぐらいからうまく乗って投げられたのでよかったと思う。中盤にさしかかるところで3点もらって、ゲーム自体を壊さずうまく引き込みたいと思った」
五回には二死二、三塁で稲葉をフォークで空振り三振に仕留める。圧巻の投球は六回。無死一塁で鈴木、古田を連続で空振り三振。ベッツには右越え二塁打を浴び二死二、三塁の危機を背負うも、城石をフォークで空振り三振に切った。
ここ一番で見せた集中力は、10三振という答えで返ってきた。そして、その先に待っていた7年ぶりの日本球界2ケタ勝利。「これで弾みをつけてローテーションを壊さないよう投げていきたい」。胸に充満する思いを簡潔に表現した。
伊良部の記念白星を、星野監督は「知っとるよ。あいつの力をいえば騒ぐことはない」と平然と話す。21日の試合後、指揮官は「あすは伊良部がビシッといってくれる」と“予告勝利”をしてみせた。揺るぎない信頼を置く右腕だけに、無失点での2ケタ勝利にも表情を崩さない。
これで井川、ムーアに続きチーム3人目の10勝投手が誕生した。それでも闘将は「10勝トリオ?10勝ファイブぐらいじゃないと」。藪、下柳の2ケタ勝利到達をどん欲に待っている。
ついにマジックは「39」に突入した。「とにかく一戦一戦、大事に戦っていくだけです」。お立ち台から下りて口が「へ」の字に戻る直前、伊良部は虎党に頼もしく約束した。(石川真之)
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