虎の夏祭り!いや、1シーズンがかりの猛虎祭だ。“実行委員会”が準備してくれた次なる演目は、沖原佳典内野手(30)による延長サヨナラ劇。投げては久保田、お膳立てに浅井も好演し、スリル満点の大活劇はもちろんハッピーエンド。ヤクルトに4年ぶり5連勝でM38。永遠に続け、夢の猛虎祭! |
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ヤクルト |
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阪 神 |
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1× |
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勝:リガン2勝 S:− |
本塁打:− |
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背中に押し寄せる歓喜の波に、両手を広げて崩れ落ちた。倒れ込んでも、次々に祝福の拳が頭へと降ってくる。収まりようのない興奮。祝福の輪の中に沈んだ沖原は、びっしょりかいた汗で笑顔を輝かせながら立ち上がった。
試合を決めたのは、伏兵たちによる執念の結晶だった。久保田、高井両者の譲らぬ投げ合いの末に、0―0で迎えた延長十一回。マウンドに立ちはだかったヤクルトの中継ぎエース・石井から、サヨナラへの突破口を開いたのは浅井だった。
「どんな球でも食らいつこうと思いました」。先頭・秀太の代打で打席に立つと、ファウルで粘りに粘って2―2の12球目を中前にはじき返した。
石井の暴投などで一死三塁とチャンスは拡大するが、金本はあえなく三振。そして代打・矢野、アリアスの敬遠を見届け、沖原がゆっくりと打席に向かう。
大好きな初球には、バットを動かさなかった。「ど真ん中を見逃してしまって…でもすぐに切り替えられました」。カウント2―1からの4球目。外角への145キロに必死に食らいついた打球に、マンモスの神様もそっと後押しした。
「あっ、やばいなと思ったけど打球が速かった分、はねてくれた」。気迫のこもった白球は一塁手の正面で跳ね上がり、右翼前で弾んだ。
求められた出番では、集中力を切らさない。12、13日の巨人戦(甲子園)では連夜の猛打賞。藤本、久慈と正遊撃手への道は険しいが「出してもらったときに頑張ることしか考えていない」。休日返上で打撃マシンと向き合ってきた成果を実らせている。
99年以来4年ぶりとなる対ヤクルト戦5連勝を、伏兵たちが劇的なサヨナラ勝ちで引き寄せた。「普段の控えがしっかりやってくれた。いや、控え言うたらアカンな」。星野監督からは最大限の賛辞が飛ぶ。
金本、八木が無安打に終わった中で、脇役が集中力を発揮した。本社からも“グチ”が出るほどの超大型補強で生まれ変わった2年目の星野阪神。だが、指揮官は言う。「こんな全員野球もある」。これもまた、星野阪神の、立派なもう一つの顔だ。(石川真之) |