阪神・星野仙一監督(56)が、ベンチから消えた。試合中に血圧が165まで上昇、ベンチ裏で吐いてしまった。約1時間半。指揮官不在のベンチだったが、桧山が、今岡が、片岡が打った。井川は、11連勝で大先輩の記録に並んだ。本当に強い。頼もしい。命懸けで、優勝へ突き進む。 |
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阪 神 |
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勝:井川13勝 S:− |
本塁打:今岡11号 |
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5回表、疲れた表情で戻った星野監督。不在の間も虎戦士は猛爆 |
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星野監督の姿が消えた。「ちょっと休む」。島野ヘッドにそう告げて二回途中、ベンチ裏へと入っていった。
「気持ちが悪くなった。吐いたよ」
血圧計の針は「165」を指していた。ベッドに横になった。トレーナーが胃の後ろ側を入念にマッサージした。すぐに立ち上がることはできなかった。
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村山実氏に並ぶ11連勝達成。エース井川が「鬼門」で力投 |
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突然の指揮官不在にも、自信に満ちあふれた選手たちに動揺はない。むしろ“命懸け”の姿に、闘争心がメラメラと燃え上がった。
初回、闘将はまだベンチにいた。まずは桧山。一死二、三塁から右中間へ先制二塁打だ。「終わって見れば最初の1本だけだったけど、一番いいところで打てた。僕が(生還してベンチに)帰ってきた時には、まだいました」。その後、体調が悪化し、吐き気を我慢できなくなった。
その姿が消えても、打線の勢いは衰えない。四回には今岡が右中間へ11号ソロ。五回には右前打、七回には中前打を放ち、18試合連続安打、今季16度目の猛打賞だ。
ベンチ裏に聞こえる虎ファンの歓声もまた、心地いい。徐々に血圧も下降して、ベンチに戻ったのは五回途中。勝負の流れは決していた。
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タイムリー2本で3打点。奮起の片岡がナインと勝利のタッチ |
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球場入り前から体調は万全ではなかった。杉田トレーナーにマッサージを申し出た。いつもは選手を優先させる指揮官。「ちょっとしんどそうだった。今までたまってた疲れじゃないか」(同トレーナー)と異変の兆しはあったという。
肉体的だけでなく、精神的にも、阪神監督は激務。ファンの多さ、過熱ぶりも中日時代とは比較にならない。首位を快走していても、いつもプレッシャーを感じ続ける日々だ。
長年、住んだ名古屋には知人も多い。前夜、そしてこの日の午前中にも次々と訪問者があった。報道陣に対しても連日、しゃべり続ける。そのことを体調不良の理由には決してしない。だが、グラウンド内外で“タテジマ”を身にまとうことは、並大抵のことではない。「ここ(阪神)の監督になって寿命が縮まった」という言葉は、冗談ばかりでもない。
昨年の開幕巨人戦では不整脈を訴え、試合中にベンチ裏へ下がった。その時以来の非常時に、頼りになる選手たちが底力を発揮。中日を粉砕してマジックを「34」に減らした。
午後10時20分、チーム宿舎。私服に着替えた闘将がロビーに下りてきた。体調は元に戻っていた。白星が最良の薬でもあるが…。「何が薬じゃ、アホか」。そう言って笑い飛ばした。後戻りはできない。まさに命懸けで、頂点に向かって走り続ける。(岩田卓士)
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