有言実行―。めっちゃ、カッコええ。やったのは、井川慶投手(24)。夏に照準を定めると公言して、八月最初の登板であわやパーフェクトの快投。今季初の3連敗の危機を救い、自身12連勝で14勝目、チーム66勝はいずれも昨年に並ぶ快挙。緩みかけたタガをエースが締め直し、さあ夏本番や! |
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勝:井川14勝S:− |
本塁打:アリアス23号 |
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“ミスタータイガース”村山氏を超える12連勝で井川は闘将とがっちり握手 |
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誰よりも自分がうれしい。だから自然と、口元が緩んだ。アリアスと一緒に上がったお立ち台。井川は、屈託のない笑みを何度も浮かべた。今季初の無四球完封。「ゲームがつくれたんでよかったです」。残した言葉は控えめでも、その端々から抑え切れない感慨がにじみ出た。降り注がれた虎党の大歓声。それがまた、心地よく胸に染み渡った。
まさにエースの独壇場である。「内容には反省点がありますが、結果は今季一番」と、本人も語ったように「完全復調」を思わせる121球だった。これまで勝ちながらもどこかに課題を残してきたが「メリハリがきっちり付けられた」。やっと納得のコメントも出た。
速球はMAX145キロ止まりも、とにかく低めを丹念に突いた。ずっと抜け切らなかったチェンジアップも要所で抜けた。許した安打は、わずかに2本。連打を浴びた五回を除けば、すべてのイニングを三者凡退に仕留めた。受けた矢野も「安心感があった」と、絶賛の出来である。
バットでもスタンドを沸かせた。四回二死一塁から、岡本の144キロ速球を左中間に先制二塁打。「たまたまです。風に乗ってくれたんで」。本人は照れ笑いも投打にわたる活躍は、辛口の星野監督に「井川しかない」と言わしめた。早くも自己タイの14勝目は、昨年のチーム勝利数と並ぶ「66勝」を運ぶものでもあった。
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ヒザ痛を吹き飛ばすダメ押し2ランでアリアスは初の甲子園お立ち台 |
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とにかくキャンプ時から「夏場」に照準を合わせてきた。8月以降に失速した昨季の反省から、ピークをこの時期に持ってくることを意識してきた。7月は4勝負けなし。「それは終わってみないと分からない」と言葉を濁したが、ここでの完封劇は、まさに狙い通りのシナリオでもある。
7月31日。寮に帰ると、ずっと閉ざされていた向かいの部屋から、明かりが漏れていた。右ヒジ手術のため渡米していた藤田太陽が、約一カ月半ぶりに帰国。仲のいい同級生と久しぶりに深夜まで話し込んだ。「元気そうでしたね」。復帰を懸命に目指す男から、活力をもらった。
これで自身12連勝。47年に御園生崇男氏が記録した「13連勝」に次ぐ、球団単独2位に躍り出た。今季初の3連敗を阻止した白星。「これからもいつも通り、頑張りたい」。輝きを取り戻したエースがいる限り、チームに、虎党に、さらなる笑みがあふれるのは間違いない。(岡本浩孝)
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