サッポロ1番ならぬ「札幌4番」の男が、星野阪神を再びVロードに乗せた。4番・片岡篤史内野手(34)の決勝打で横浜に連勝。思えば昨年の同じ日、同じ場所で、同じチーム、同じ投手に2安打完封負けを喫した。故障者続出に泣いたその時の4番が、片岡だった。そして1年後―。見事にリベンジを果たしたベテランの瞳が、北の地でキラリと光った。 |
|
阪 神 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
2 |
0 |
0 |
0 |
|
3 |
横 浜 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
|
2 |
勝:藪8勝
S:ウィリアムス22S |
本塁打:− |
|
|
|
|
|
“4番・片岡”が1年越しのリベンジ。勝ち越しのタイムリーだ |
|
景色が映える。1年前とは、目に飛び込んでくるものすべてが違う。怒声もない。物も飛んでこない。美しき札幌の風景をぐるりと見渡した片岡は、かすかに笑う。「年に1回しか来ない札幌で、勝ててよかった」。腹の底からわき上がる充実感。1つの重荷が肩から下りた瞬間だった。
|
|
約1カ月ぶりの先発で藪は8勝目。ウィリアムスとがっちり握手 |
|
野球の神様は、いきな計らいをする。1年越しの雪辱の舞台。勝負どころの六回に、なかば運命的に回ってきた。同点で迎えた一死一、二塁の好機。見逃すわけがない。フルカウントからドミンゴの投げた直球に、1年分の気持ちを上乗せして、はじき返した。
「心から勝ちたい、その気持ちがタイムリーへとつながった。気持ちなんだよ」。右翼に落とす適時二塁打で、一気に2人をかえす。勝負の分かれ目は、完全に意識の差。打席に向かう前から、すでにマウンドをのみ込んでいた。4番の気迫が呼んだ決勝打だ。
昨年のこの日、くしくもこの札幌ドームでドミンゴと対戦した。浜中、桧山が離脱するという、今年と同じ状況下で初めて4番に座ったあの日。3打数無安打と重責を果たせず、試合は零封負け。パを代表する打者として入団した男も、虎の4番という重圧に押された。積もった因縁を洗い流すには、この地が一番合っていた。
|
|
バットを折りながら先制打。今岡が再び上昇気流に乗った |
|
「4番がいないから、おれが打っているだけや」。ヒーローはこの言葉を繰り返した。思い返せば、87年に春夏連覇を果たした母校・PL学園と似ている。春には7、8番を行き来した男は、史上最強とうたわれた立浪(中日)、橋本(元巨人・現野球評論家)らをせん望のまなざしで追いかけていた。
「おれがエリートなんてとんでもない。こういうやつらがプロに行くと思っていた」。そんな片岡も、夏には4番の座を渡さず、プロへの階段をともに上がってきた。努力が、そして気持ちが人を変えるという、大事なものを携えていた。
連勝でマジック24。「東京ドームぐらいで盛り返すんじゃないか。4番?いい感じで振れとった」と指揮官も笑顔で振り返る。北の大地で再出発。澄み渡った夜空が、チームの気持ちすら語っているようだった。(鶴崎唯史) |