お帰り!熱い甲子園には、強い虎が、よく似合う。阪神・金本知憲外野手(35)が、魅せてくれた。初回に逆転の超高速3ラン。伊良部が抑えた。赤星も50盗塁を決めた。そして、吉兆?の猫まで走った…。ロード出発直前の8月3日。中日戦を7―1で勝利して以来、24日ぶりの甲子園で、勝った。これを待っていた。もう、心配はいらん。Vまで一直線や。 |
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巨 人 |
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阪 神 |
3 |
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1 |
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0 |
1 |
× |
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6 |
勝:伊良部12勝 S:ウィリアムス23S |
本塁打:金本18号 |
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耳をつんざく大声援が、肌を焦がすような熱気が、テンションをより高めてくれた。久しぶりに帰ってきた甲子園。虎党がつくり出す独特のムードが、金本の心を躍らせた。いきなり2点のビハインド。だが、燃える男の一振りが、あしき流れを断ち切った。ファンが思い描いている強き虎を、本拠地に甦(よみがえ)らせた。
0―2で迎えた、初回無死一、二塁で、今季最高の特大アーチをたたき込んだ。桑田がカウント1―1から投じた114キロカーブをはじき返すと、打球はわずかな逆風を切り裂くように加速して、バックスクリーンの中腹で弾んだ。
「手応えはあったけど、もっと飛んだと思ったよ」とは、本人の弁だが、推定140メートルの逆転弾は、Gに傾いた流れを引き戻した。2点リードの五回無死三塁でも、貴重な中押しとなる右前打。「どういう形でも、ランナーを返すことしか頭になかった」。2打席目の三塁内野安打を含めて、3安打4打点の大活躍。金本なくして、この勝利は語れない。
8月は、とにかく絶好調だ。これで今季初の3試合連発。一時は2割7分台まで下がった打率も、10試合連続安打で・306まで再上昇した。まさに「夏男」の面目躍如である。だが、金本はチームが苦しい状況で踏ん張れていることに充実感がある。
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吉田義男氏以来、虎では47年ぶり2人目の50盗塁を決めた赤星 |
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「必ず連敗とかする時期がある。そこで自分に何が出来るかを、ずっと考えてきたからね。(決勝打の)札幌とか、4安打の東京ドームとか。勝っている試合で結果が出ているのは、うれしいね」
故障者が続出したロード中の勝ち試合の大半に、金本は貢献している。その裏には不断の努力がある。この試合もお立ち台に上がった後、1人、ベンチ裏にこもった。約20分間。誰もいない場所で素振りを繰り返した。「調子が良くても悪くても、1年に振り込む時期、打ち込む時期をつくる」のが、金本流だ。それが今。ここに来ての好調は、決して偶然の産物ではない。
久々の本拠地勝利で、マジックも「16」に減った。星野監督は「そんな感傷に浸っている余裕はない」と言いながらも「しびれたねえ」と言って笑った。この勝利の重さを指揮官は知っている。
金本は最後に、こう言った。「気持ちで体を引っ張ってる感じはあるけどね」。鉄人にも疲れはある。だが、虎党の熱い声援が、すべてを癒やす。聖なる甲子園が、虎に新たな力を与えてくれた。(岡本浩孝) |