夏休み最後の甲子園。熱きドラマに、感動した!昨年、右肩手術をした阪神・福原忍投手(26)が、今季初先発。380日ぶりの1軍マウンドを、6回無失点に抑え、787日ぶりの先発勝利を挙げた。同級生・赤星が援護し、4番・片岡も打った、ベストゲーム。マジックもカウントダウン目前の「11」に。Vの日まで、とことんタイガースだ。 |
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ヤクルト |
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阪 神 |
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× |
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勝:福原1勝
S:− |
本塁打:− |
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ここに復活。787日ぶりの先発白星に笑顔を浮かべる福原 |
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ほんの数分だけ、苦しかった日々を思い返した。一塁ベンチで最終回の守りを見やりながら、福原は、しばし感慨にふけった。ここまでの道のりが走馬灯のように、胸を駆け抜ける。その両眼は、わずかに潤んでいるように見えた。
勝利の瞬間。みんなが一斉に祝福の手を伸ばしてくれた。喜びを分かち合う時の訪れとともに、福原はやっと笑顔を浮かべた。ウイニングボールをポケットに忍ばせて、お立ち台に上がると、今度はスタンドが温かい声援で迎えてくれた。
「素直にうれしいですね」
もう万感の思いより、歓喜が先に立った。380日ぶりに上がった1軍マウンド。787日ぶりにつかんだ先発白星。久しぶりに浴びたスポットライトが、流すはずの涙を、いつの間にか乾かしていた。
右肩手術からの復帰戦であった。立ち上がりはさすがに「だいぶん、緊張しましたね」。だが、自分の投球だけは見失わなかった。MAX148キロの速球を軸に、スライダー、カーブを丁寧に低めに集めた。「肩に負担がかからないフォームを意識してきた」ことで、制球も安定した。6回を4安打8奪三振、そして無四球。無失点に抑える好投で、13年ぶりのヤクルト戦勝ち越しを、チームにもたらした
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値千金の適時2塁打。片岡はきっちり4番の仕事を果たした |
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昨年10月18日。福岡県内の病院で右肩にメスを入れた。以来、復活を目指して、地道なリハビリに励んできた。「みんなが野球をやっているのに自分はやってない」。ボールを投げられないもどかしさから、チームに目を背けた時期もある。「試合を見ると、焦るから…」。テレビをつけても、阪神戦の中継をあえて避けることもあった。
だが、そんな日々ともお別れだ。「(コンディショニング担当の)石原さん、手術してくれた先生、お世話になった人に感謝したい」。逆に心配をかけてきた人々に、胸を張ってお礼を言える。前日。久々に実家に電話をかけた。「久しぶりに元気な声を聞けた」と、喜んだ母・恵美子さんは、テレビ中継を見て涙を流した。やっと、みんなで喜び合えるところまで、戻ってきた。
夏休み最後の日。福原も「空白」の時間にピリオドを打った。「これからもチームの勝利に貢献したい」。マジックは「11」になった。もう過去は振り返らない。澄んだ瞳には、明るい「光」だけが満ちていた。(岡本浩孝)
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