見たか男・金本の心意気―。満身創いの「鉄人」が呼び込んだ大勝、そしてマジック5だった。前日、左足首を負傷した阪神・金本知憲外野手(35)がケガを押して強行出場、アリアスの満塁弾を誘発する先制打と、激走三塁打でチームの士気を高めた。 |
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勝:福原2勝S:− |
本塁打:アリアス32号 |
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猛虎に「鉄人伝説」が生まれた。いや“鉄人”という言葉では、その迫力を語り尽くせない。ダイヤモンドを何度も駆け抜けたのは、手負いの“野武士”だ。
「無理やり出た感じやからね。迷惑かけないことだけ考えた」。金本の言葉は飄々(ひょうひょう)と宙に舞う。その一方で、左足は痛そうに引きずっている。
痛みをかき消す麻酔となったのは、脳天からわき出たアドレナリンだ。まず五回、一死一、二塁から左翼前へ先制適時打。これが呼び水となり、一死満塁からアリアスが左翼席へ試合を決める満塁弾をぶち込んだ。
そして先頭打者として打席に立った七回には、右中間を破る当たりで三塁まで決死の走塁。「打球が見えんかった。入ったと思ったらとんでもないところに転がっとった」。足の痛さも関係ない。とにかく走る。夢に向かって走る。激走した後、桧山の右前打で追加点の本塁を踏むと、ベンチ前でへたり込んだ。
1999年7月21日から続けてきた連続フルイニング出場は、この日で593試合目。6日に痛めた左足首は、一夜明けて一層悪化していた。それでも、三宅秀史氏(阪神)の持つ記録、700試合を目指す金本の意思に変わりはなかった。
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本塁打王争いでトップに並んだアリアス。満塁弾も豪快だった |
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試合前「ノー文句や。そんなんでいちいち言わんでええ」と星野監督への“お伺い”を立てずに出場を決めると、練習ではフリー打撃まで行った。そんな男の気概を周囲もくむ。患部を見た杉田トレーナーは「金本じゃなければ止めるんだが」と言いながらも、痛み止めの座薬を投じた。
広島で3割、30本塁打、30盗塁の「トリプル3」を達成した00年4月、金本は右手人さし指を負傷した。ひどい腫れにバットが握れない日が2週間続いたが、隠し通して出場を続けた。「人に言うたら負けや」。エゴイズムに聞こえる言葉にこの男の哲学がある。100%の力を出し切ってこその記録だった。
球団史上最多タイの80勝を達成。球団記録となる同一カード22勝のおまけもついた。マジックは5。きょう8日に神宮、ナゴヤへの“Vロード”に旅立つ。「次?出ますよ、もちろん」。栄冠へのけん引車はどんなことがあっても、自分からその足を止めはしない。(船曳陽子)
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