手抜きなし。容赦なし。完膚なきまでのG倒劇には、1カ月後の日本シリーズを視野に入れた「練習台」の風情すら漂う。球団史上最多タイのカード17勝目。そして区切りの巨人戦650勝目。きな臭さが漏れるライバル球団の動向に目もくれず、星野仙一監督(56)率いるV軍団は最後まで全力闘争や!
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阪 神 |
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勝:藤川1勝
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本塁打:関本4号、平下2号 |
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宿敵のセコンドは、もうタオルを投げていた。それでも、血の気の多い次代の猛虎には関係ない。1カ月先には頂点をかけた日本シリーズ。そして、その先に見える黄金時代を見据えれば、この男たちに“消化試合”など存在しなかった。
14日に再登録された藤川が、今季2度目の先発で初勝利を挙げた。5月25日のヤクルト戦(松山)で先発しながら、四回KO。4カ月ぶりの1軍マウンドでリベンジを果たした。
「球児が何とか5イニングを投げた。ちょっとボールが散らばってきたから代えたけどね」と星野監督。5月の初先発まで中継ぎ起用だったが、5回3安打無失点の内容に「あの子は先発がいいのかも…」と、来季以降のローテへ期待がふくらんだ。
藤川の降板後は、左の中継ぎとして日本シリーズで重要な役割を担う吉野がマウンドへ。六回を3人でピシャリと打ち取ると、七回には先頭のペタジーニを遊ゴロに抑えて、リガンに後を託した。シリーズの“シミュレーション”にも見える継投策に、星野監督は「まだまだ、何もやってません」とシラを切る。
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5回無失点。今季2度目の先発で今季初勝利を挙げた藤川 |
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リーグ優勝翌日の16日から5番・二塁で“固定”されている関本が、三回にソロアーチ。3安打2打点と火を噴いた。また、関本とともに16日に登録された平下が九回に代打で出場し、2号アーチを放った。
リーグ制覇の“脇役”たちが「我先に―」とアピール。リーグ制覇後も「あっさり凡打したヤツはマイナスだよ」とチーム内競争をあおる田淵チーフ打撃コーチに、平下は「せっかくチャンスをもらったんだから、頑張るだけ」と鼻息を荒くした。
完勝で1979年以来24年ぶりに、巨人戦1シーズン最多の17勝に並んだ。「あっそう。わかりました。心によく留めておきます」。指揮官の口調が時代の移り変わりを物語る。1リーグ時代から、巨人戦は通算650勝目を数えた。
この日の朝、巨人・渡辺オーナーの「阪神に3連敗なら続投は白紙」という発言に、星野監督は「やりにくくなるようなことを言うなよ。かわいい後輩に。これからの人材や」と語っていた。
それでも、いざ戦場に出れば話は別。見下ろした場所には、かつての盟友が横たわっている。その姿を一瞥(べつ)して、星野監督は次なる栄光へ突き進む。(船曳陽子) |