あと1勝だ。阪神・井川慶投手(24)が、広島相手に好投、今季19勝目を挙げた。「エースの勲章」でもあるシーズン200投球回も突破、球団では1979年の小林繁以来、24年ぶりの20勝に王手をかけた。今季最終戦となる10日の広島戦(甲子園)で偉業に挑む。さあ行け井川、勝ってその名を歴史に刻め―。 |
|
阪 神 |
1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
3 |
0 |
|
5 |
広 島 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
|
1 |
勝:井川19勝 S:− |
本塁打:− |
|
|
|
|
|
初の200投球回も達成。中4日で19勝目を挙げた井川 |
|
いつも通り、小走りだった。「200イニング?1つの目標だったんで」。感情は表に出さない。ヒーローインタビューを簡潔に終えたエースは、ナインの待つバスへと急いだ。今季初のデーゲームで「夢の20勝」へ王手をかけた。その過程で達成した初のシーズン200投球回数。通路へ消える直前、祝福のスタンドに左手を2度振り、井川はささやかに応えた。
|
|
代打でダメ押しの適時打を放った平下はシリーズへ必死のアピールだ |
|
「中4日?まあ、調整はきっちりできました」。今季初めて臨んだ中4日の曇天のマウンド。背番号29は、すぐになじんでいた。二回に安打と暴投で背負った二死二、三塁の場面でも、石原を速球で左飛に切った。
唯一の失点は、前田に逆球を運ばれた四回のソロ本塁打のみ。前を打つ町田、シーツに連続して強いライナーを打たれ、矢野とコースを確認した直後だった。それだけに、8回1失点の投球にも「ほとんど野手の人に助けられました」と素っ気なかったが、技術的にも、精神的にも負ける要素などなかった。
躍動するエースの姿に、パの覇者であるダイエーのスコアラー陣から感嘆の声が漏れた。9月30日のヤクルト戦(神宮)に続き、井川の投球を目の当たりにした豊倉チーフスコアラーは「中4日でも力のある球を投げる。パ・リーグにはいないタイプ」と、さらに警戒感を強めた。
|
|
恐怖の下位打線復活。はつらつプレーの藤本も2カ月ぶりに打率3割に |
|
タカの目が光る前で、堂々とつかんだ今季19勝目。チームでは1979年の小林繁以来、リーグでは99年の上原(巨人)以来、4年ぶりの20勝へ王手をかけた。
「こここまできてみりゃ、よう頑張ったなあと思う。ワシに怒られながら」。ずっと厳しい言葉を続けてきた星野監督は目を細めた。防御率と20勝での最多勝というダブルタイトルにも「あと1つ?本人が行くといえば行かす。防御率も間違いないやろ」と、もはや疑うことなどない。
20勝をかけて、今季最終戦である10日の広島戦(甲子園)に再び中4日で挑む。それでも、井川は相変わらず。「まだ投げるか分からないけど、チャンスがあれば頑張ります」―。味気のない言葉の奥底に、いつも井川の熱い気持ちが隠されている。
200投球回数は、まさしくエースの数字。これに「20勝」という勲章を加え、18日、博多のマウンドに立つ。(石川真之) |