「広島紅白戦、紅組３‐２白組」（１０日、日南）

　ＷＢＣ日本代表候補の前田健太投手（２４）が、紅白戦に先発。今季初の実戦登板で２回１安打１失点（自責点０）だった。全球種を投げ、スライダーで空振り三振を奪い打者を抑え込んだ。日本の統一球で投げるときよりも鋭く横に曲がったマエケンの伝家の宝刀。本大会でも大きな武器となること間違いなしだ。

　指に残る感触が不安を一掃してくれた。今季初の実戦マウンド。前田健は「思っていたよりもよかった。打者に投げる感覚、打ち取る感覚を思い出すことができた」と振り返った。試運転の段階ながら、上々の滑り出しに納得顔を浮かべた。

　初回、安部を左邪飛に打ち取るなど三者凡退スタート。２回は、堂林の三塁線突破の二塁打を皮切りに、四球や味方の失策が絡み１点を失った。

　８日のシート打撃登板を回避。９日もブルペンに入らなかったため調整が心配された。だが、この日のテーマは実戦感覚を取り戻すこと。「配球とか考えずに投げた。不安とかはない」と一切、気にするそぶりはなし。２回、打者７人に３６球を投げて１安打１失点（自責点０）。充実の表情で汗をぬぐった。

　ＷＢＣ球で直球、カーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ、ツーシームと全球種を試投した。日本の統一球よりも滑りやすいとされるＷＢＣ球。カーブが高めにすっぽ抜けることはあったが、伝家の宝刀・スライダーのキレは格段に上がった。

　初回１死、菊池をフルカウントから１２５キロのスライダーで空振り三振に斬った。「ブルペンではまだあまり投げていない」と“未習得”ながら、統一球時よりも真横に鋭く曲がった“ＷＢＣ版”スライダー。本大会でも大きな武器になることを確信させた。

　直球も最速１４４キロをマークした。「１３２キロくらいしか出ていないと思った」とおどけたが、「スピードがどれだけ出るかと思っていた。安心した」と胸をなで下ろした。エースの順調な仕上がりに野村監督は「まだまだだと思うけど、感じはよかった」と及第点を与えた。

　第３クールは変化球など投げ込み量を増やし、１４日の紅白戦に再び登板。その後１５日からの代表合宿に合流する。「まだ全力で投げていない。力を入れて投げられるようにしたい」。着実に調整を進める背番号「１８」。頼もしい限りだ。