浩二監督、不可解采配…なぜ重盗OK
「WBC準決勝、日本1-3プエルトリコ」(17日、サンフランシスコ)
WBC日本代表は準決勝のプエルトリコ戦に敗れ、3連覇の夢が絶たれた。3点を追う八回、1点を返して押せ押せムードとなったが、痛恨のボーンヘッドが飛び出し反撃が終了。山本浩二監督(66)は「悔いはない」と口にしたが、何とも悔やまれる一戦となった。日本代表は19日に帰国し、記者会見の後、解散する。
とんでもないボーンヘッドで、3連覇の夢が絶たれてしまった。試合後の会見。山本監督は「選手はよくやってくれた。ゲームに悔いはない」と強調したが、目は泳ぎ、何度も口ごもるなど、動揺は隠せなかった。
悪夢は八回に起きた。1点を返し、なお、1死一、二塁。打席に主砲の阿部。一発逆転の絶好機だったが、反撃ムードは一瞬にしてしぼんだ。ワンストライクからの2球目。二塁走者の井端が三盗のスタートを切ろうとしたが自重。にもかかわらず、一塁走者の内川が猛然と二塁へスタートを切ってしまった。
投球はボール。捕手Y・モリーナがボールを持ったまま、二塁手前で立ち止まる内川を追いかけ、そのままタッチアウト。痛恨プレーで、流れを手放してしまった。
会見では外国メディアを含め、この不可解プレーに対する質問が集中した。山本監督は「ダブルスチール。行ってもいい、というサインだった。ちょっと井端のスタートが遅れたんで、ああいう結果になってしまった」と説明した。
そして、こう続けた。「スラッガー阿部慎之助が打者なんですが、ひとつでも前の塁に行くという姿勢、これは失敗しましたが、私はこの作戦は失敗か成功か。悔いはありません」。ミーティングで左腕ロメロのモーションが大きく、三盗が可能であると選手に伝えていたことも明かした。
前走者を確認せず、暴走した内川にも当然、非はある。だが、相手の捕手は世界屈指の強肩を誇るY・モリーナ。しかも、打席には阿部。主砲に託し走者には「走るな」のサインを出しても不思議ではない場面だった。
敗因について、山本監督は「相手の投手陣がキレが良く、チャンスをつかめなかった」と語った。中盤の好機で追いついていれば、展開は変わった可能性もある。だが、中途半端な采配で流れを失ったことも事実。大会前から指揮官の手腕を不安視する声は多かったが、ここ一番で露呈した。コーチで惨敗した北京五輪に続き、またも頂点に上り詰めることはできなかった。
メジャー組が辞退するなか最低目標だったベスト4進出を果たした。今後について、山本監督は「そんなことは考えられん」と明言を避けた。常設化された侍ジャパンで「山本体制」の継続を求める声が出る可能性もある。ただ、勝てた試合を落とした責任はあまりにも重い。