村神様の逆転サヨナラ打で侍決勝進出 悩める大砲に「ムネに任せた」 迷い吹き飛ばした将の言葉

 9回、村上(中央)がサヨナラ2点適時打を放ち、喜ぶ侍ジャパン(撮影・吉澤敬太)
 佐々木朗にスポーツドリンクをかけられる村上(共同)
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 「WBC準決勝、日本代表6-5メキシコ代表」(20日、マイアミ)

 土壇場で「村神様」がよみがえった。野球日本代表「侍ジャパン」は、メキシコに劇的な九回逆転サヨナラ勝ち。2連覇を果たした2009年の第2回大会以来の決勝に進出した。不振だった村上宗隆内野手(23)が2点適時二塁打を放ち、熱戦を制した。日本は1次リーグから負けなしの6連勝。投打ともに最高の状態で、21日(日本時間22日)に前回覇者の米国と世界一を懸けて戦う。

 ベタベタになりながら、村上は探していた。瞳を真っ赤に染めた指揮官が瞳に映ると、強く、熱く飛びついた。「昨年11月の強化試合から栗山監督にずっと中軸を打たせてもらってきた。何とかしたい思いがありました」。苦しんだ先に差し込んだ光。劇的打で、ついに世界一へ王手だ。

 1点を追う九回、最後の攻撃にドラマは待っていた。大谷と吉田で作った無死一、二塁の好機に、メキシコのヒル監督もたまらずマウンドへ。このラストチャンスに、「バントも頭によぎった」。この日はここまで走者を置いた場面で3三振。不安な“顔”が、知らず知らずのうちに心を埋め尽くしていた。

 だが、そのモヤモヤは一気に吹き飛ばされる。城石内野守備走塁兼作戦コーチから、栗山監督からの言葉を伝え聞いた。「ムネに任せた、思い切って行ってこい」。サインは、打て。腹をくくるには十分すぎる信頼。打席に向かうと、その3球目だった。直球を振り抜く。打球はグングンと伸び、ベンチからはナインも飛び出した。

 「パワーがなかった」と笑いながら振り返ったが、失速しながらも中堅頭上を超えるフェンス直撃。一走の俊足・周東が瞬く間にホームまで生還した。二塁を強く蹴ったところで、ヘルメットを高く放り投げると歓喜に沸く仲間の元へ。「本当に周りの力というか、チームのありがたさ、団結をすごく感じました」と、激闘に終止符を打った。

 もがき、苦しみ続けたからこそ、最高の笑顔が輝いた。今大会は4番でスタートするも、本来の力を発揮できない不振から、16日の準々決勝で5番に降格。東京ドームで行われた1次リーグでもヒーローインタビューを“辞退”するなど、納得のいく打席は少なく、とてつもなく悔しい時間を過ごしてきた。

 そんな時に寄り添ってくれたのが仲間であり、栗山監督だった。この日も序盤からベンチでは大谷が相手先発・サンドバルの情報を元に助言。ケガで辞退となった鈴木からは「前を向いて頑張れ」と動画でエールが送られ、指揮官には「最後はおまえで勝つんだ」と常に伝えられてきた。

 もみくちゃにされながらも、その中心で両拳を突き上げた村上。さぁ、いこう。「このチームでできる最後の試合。最高の決勝戦にしたいです」。一人で成し遂げられないことも、仲間がいたら可能になる。世界一の頂が見えた。

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