侍・大谷 激走&雄たけび二塁打 「カモーン」3連発でマイアミの奇跡呼んだ
「WBC準決勝、日本代表6-5メキシコ代表」(20日、マイアミ)
髪を振り乱し、力強く前に進んだ。二塁を陥れた大谷翔平投手(28)が、狂喜乱舞する三塁ベンチに向かって3度、ほえた。
「カモーン!カモーン!カモーン!」。
鬼の形相で両手を振り上げ、侍たちの闘志に火をつける。両こぶしを握り締め、厚い胸板を誇示するようなマッチョポーズで咆哮(ほうこう)した。
「レッツ・ゴー!」
負ければ終わりの一発勝負。1点ビハインドの九回裏にドラマが待っていた。魅せたのは先頭で打席に立った大谷だ。「チャンスメークするだけ。つなぎさえすれば1点ぐらい簡単にひっくり返せる」。自分で勝つ、ではなく、みんなで勝つ。初球、見逃せばボールの外角チェンジアップにバット一閃。右中間に落ちた打球を見ながら滑り込むことなく、二塁に達した。
一塁を回ったところで自らヘルメットを飛ばした。「脱げそうだったので直すより脱いだ方がいいかな、と。打球的に三塁を狙えるかなと加速していった」。無我夢中ではなく沈着冷静。塁上からの3度の雄たけびも「ここからだぞ!っていう気持ちでいた。ここの1本がつながりさえすれば」との思いからだった。
あとは仲間の力を信じるだけ。4番吉田が四球でつなぐと、不振にあえいでいた村上のバットが火を噴く。「結果が出ずに苦しかったと思うんですけど、必ず打ってくれると思った」。打球が中堅の頭上を越えた瞬間、満員3万5933人が詰まった客席が激しく揺れた。「本当に勝てて良かった。苦しいゲームでしたけど、あきらめずにやってよかった」。安どの表情を見せた。
決勝の相手は前回覇者の米国だ。「本当に素晴らしい相手。1番から9番までスター選手がそろっている」。3大会ぶりの覇権奪回を目指す日本が乗り越えなくてはいけない大きな壁だ。「自分たちの野球ができれば絶対に勝てると思う」。目指す世界一の頂はもう目の前だ。
◆日本が14年ぶり決勝進出 日本代表の決勝進出は3大会ぶりで、2006年の第1回、09年の第2回大会に続き今回が3度目。第1回大会の決勝戦はキューバと対決しスコア10-6の快勝。1点リードの九回にイチローのタイムリーなどで4点を挙げて勝負を決め初代世界一に。先発・松坂は4回1失点で同大会無傷の3勝目で最優秀選手に選出。第2回大会の決勝は韓国と激突。韓国とは2次ラウンドまで4度対戦し2勝2敗で迎えた大一番だった。同点で迎えた延長十回に同大会で不振が続いていたイチローが決勝2点タイムリー。最後はダルビッシュが締めスコア5-3で連覇を決めた。