侍J 距離感の近さが生んだ団結力 湯浅、最年長ダルの雰囲気作りに感謝 中野「師匠」源田を“密着マーク”

 強化合宿中、ダルビッシュ(右)からボールの握りを教えてもらう湯浅
 強化合宿中、源田(右)らとグラブを見せ合う中野(中央)
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 侍ジャパンが世界一を奪還した第5回WBC。2月の宮崎合宿からチームを追い続けた侍取材班が、5回の連載で大会を振り返る。第2回は関谷文哉記者。阪神から選出された中野拓夢内野手(26)、湯浅京己投手(23)と侍戦士たちの「距離感」にスポットを当てる。

  ◇  ◇

 独特の緊張感に包まれたWBCの舞台。14年ぶりの世界一奪還の使命を受けた侍戦士は計り知れない重圧の中で戦っていたと思うが、中野も湯浅も時には笑顔を浮かべる姿が見られ、堂々とプレーする姿が印象的だった。

 世界一に輝いた侍ジャパン。選手同士の距離感の近さが、試合での団結力を生んだと言っても過言ではない。侍合宿期間中から他球団の選手たちと積極的に交流を図る姿が見られ、ナインの雰囲気の良さが感じられた。

 投手陣の結束力の強さは間違いなく最年長のダルビッシュの存在が大きい。「何でも聞ける関係をダルさんが作ってくれた」。湯浅はそう話す。スライダーやフォークの握り方などを教わり、サプリメントの効果なども聞くことができ、貴重な時間を過ごしてきた。

 さらに、「宇田川会」と称された投手陣の食事会から「30人の侍」が焼き肉屋に全集結した決起会もあった。湯浅は「自分たちから行きづらい部分がある中、ダルさんは本当にどんどん来てくれた。そういう面でもうれしいですし、本当にありがたい」と感謝する。

 中野は合宿期間中から同じ遊撃手の源田に“密着マーク”。「自分の師匠です」と笑う。球界随一の守備職人から捕球のコツを学び、時には源田のグラブを使用させてもらう機会にも恵まれた。

 大会期間中も“師匠”と、山田の気づかいがうれしかった。右手小指を骨折した源田に代わる形で、遊撃で初先発だった1次リーグの11日・チェコ戦(東京ド)では、初回にまさかの一塁悪送球。そんな中野の元へ、真っ先に二塁の山田が声をかけ、ベンチでは源田がずっと隣で言葉をかけてくれていた。中野はこう振り返る。

 「なかなかコミュニケーションも最初は取れなかったんですけど、徐々にいろいろ話ができるようになって。連係もうまく取れたのかなと思います」

 約1カ月前の2月16日。那覇から侍合宿が行われる宮崎に飛び立つ飛行機に、中野と湯浅とともに記者も同乗していたが、どことなく緊張の面持ちを見せていた。普段、あまり話すことのない選手たちと過ごす約1カ月間。湯浅も最初は「やっぱり緊張感があって」と本音を明かしていた。

 それが、早い段階から意見交換ができるような関係性を築き「タイガースの中だけじゃ分からなかったこともたくさん見えて、この環境でやれたことが自分の中では大きかった」と湯浅は実感に浸っていた。かけがえのない経験をした2人。次は猛虎で頂を目指す。

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