“想定外”の事が起きた開幕3連戦
リーグ連覇、33年ぶり日本一に向けたカープの2017年が幕を開けた。昨年同様、開幕3連戦を2勝1敗と勝ち越して終えたことは良しなのだが、私自身は「不安の方が大きい3連戦だった」と思った。3戦目(4月2日)に先発して勝ち投手になった九里や、3試合連続2桁安打の打線はもちろん評価できる。だが、初戦(3月31日)、2戦目(4月1日)に先発して早々にKOされたジョンソンと岡田の投球内容には単なる「不安」以上の怖さを感じた。
◆3月31日(マツダ・広島1敗)
阪神 203201002=10
広島 010003110=6
◆4月1日(マツダ・広島1勝1敗)
阪神 4200020000=8
広島 3000221001X=9(延長10回サヨナラ)
特に、昨年15勝を挙げて沢村賞にも輝いたエース・ジョンソンの早期KOは予想外と言うか、全く想定していなかった。この2年間でカモ同然にしてきた阪神打線に4回途中まで7点を奪われて降板。雨で試合開始が30分延び、さらに極寒の中での投球という悪い条件が重なったが、これは阪神先発のメッセンジャーとて同じことで言い訳には一切ならない。確かに味方守備に足を引っ張られた感はあったものの、立ち上がりから常にイライラした面を表に出し、精神的に不安定になっていた。ここを相手打線に突かれたわけだが、今までやられっ放しだった阪神にしてみれば、ジョンソンを初めて攻略したという感覚だったに違いない。そう思わせてしまったこと自体、今後に大きく響くだろう。
そして2戦目の岡田。精神的支柱だった黒田(博樹氏=現野球評論家)さんが抜け、“ポスト黒田”の最右翼として昨秋の秋季キャンプから首脳陣の期待を受けてオープン戦でも着実に結果を残してきた。ジョンソンに次いで開幕2戦目の先発に抜てきされたのは、緒方監督の大きな期待の表れだったが、全く自分らしさを出せないままマウンドを降りた。昨秋からこれまでフォーム修正に取り組んで成果を出していたものを、全て失ったような4イニングだった。
この岡田はともかく、ジョンソンの場合は高いレベルでの安定が1年間通して求められている。それがカープ連覇への大前提になるからだ。このエース助っ人はこの2年間、常に黒田さんを見てその野球に取り組む姿勢にリスペクトしてきた。それほど大きな存在だった黒田さんや、バッテリーを組む石原が昨年はうまくメンタル面をコントロールしてきたのだが、開幕戦を見る限り、我慢が効かなくなっているように見えた。これからはより石原に頼る部分が大きくなってくると思う。
長いシーズンを考えれば、この2人の「崩れ方」が大いに心配になったが、逆に次の2人の登板が楽しみでもある。普通にいけばジョンソンが7日、岡田が8日のヤクルト戦(マツダ)になる。ここでどんな投球を見せるか。勝ち負けの結果はもとより、その投球内容に注目したい。
横山 竜士(よこやま・りゅうじ)1976年6月11日生まれ、40歳。福井県出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。福井商から94年度ドラフト5位で広島入団。14年現役引退。通算成績は507試合46勝44敗17セーブ110ホールド、防御率3・42。2016年からデイリースポーツ評論家。