「継投」の難しさを実感した2つの敗戦
8日の中日16回戦を延長12回引き分け、優勝へのマジック「33」が点灯したと思ったら翌日消滅、さらに思いもかけない落とし穴にはまり込んでしまった。8~10日までの中日3連戦(ナゴヤドーム)は打線が機能せず、守備もミスが相次いで8カードぶりの負け越し。続く11日の巨人18回戦(マツダ)にも敗れて5月19~21日以来の3連敗を喫した。その後、連勝して傷は最小限に止めたが、小さな綻(ほころ)びが気になる一週間だった。
マジックが点灯した翌日の中日17回戦に先発したのは、今季7勝無敗の大瀬良。同点の五回裏、下位打線につかまってピンチを招き、自らの暴投で勝ち越し点を許した。この回2点を失うと、続く六回にも致命的な4失点。これで勝敗は決した。2死一塁から7番以下に4連打を浴び、左腕・佐藤に代わったのだが、ベンチは次の回に大瀬良に打順が回ることを考慮し、できるだけ引っ張ろうとした。しかし、これが裏目に出た。
これと同じようなシーンがもう一試合あった。11日の巨人18回戦で、2点リードをもらった先発・福井が五回に2死一塁から突然崩れ、一挙6点を失って逆転された。マギー左安打、坂本四球で満塁とされ、阿部に走者一掃の適時二塁打。続く村田にも右前適時打を浴び、長野に至っては平凡な投ゴロを処理し損ねて内野安打にしてしまった。個人的にはここで交代だったと思う。しかし、ベンチは次の亀井まで引っ張り、左中間を抜く適時二塁打を許してしまう。
逆転された後を抑えてくれれば、次の回で代打を出せる-。そんなベンチの計算はいとも簡単に打ち砕かれた。福井は小林のところで交代、代わった中田も敬遠後に投手・田口に6点目の右前打を許した。小林を敬遠するなら福井でもいいはずで、中田には酷なマウンドになった。「3つ目のアウト」が取り切れずに大量失点し、結果的に敗れたこの2試合に、継投の難しさを改めて痛感させられた。
打線も機能しなかったと言ったが、走者を置いた次の打者が仕事できていたなかった。例えば11日の巨人18回戦。初回いきなり先頭・田中が二塁打で出塁しながら、菊池がバント失敗の後、平凡な右飛。二回も松山右前打後のエルドレッドが三ゴロ併殺、というように、序盤4度先頭打者が出塁したものの、次打者がいずれも走者を進めることなく凡打に倒れている。長打力が魅力のチームとはいえ、やはり足を絡めた「つなぎの野球」が緒方カープの基本。田口や菅野といったリーグでも指折りの投手を相手にした時はチャンスは限られている。そのチャンスをいかに生かし、得点につなげるか。苦しい時こそ一発頼みにならず、1点を確実に取る野球に徹してほしい。
マジックが消滅し、2位・阪神が一歩ずつ差を縮めてくる中、薮田が会心の投球をしてくれた。12日の巨人19回戦。7月以降負けなしで防御率リーグナンバー1の菅野を相手に一歩も引かず投げ合い、見事なプロ初完投、初完封勝利を挙げた。自ら志願して投げきったその心意気もいい。薮田は十分完投する能力があるのだから、さらなる“未知の領域”を目指してもらいたい。この薮田の力投が、翌日(13日)岡田の11勝につながった。いい波及効果が今週先発する野村、大瀬良、そして福井にも及ぶことを期待している。