連覇導いた緒方監督の選手との“距離感”

 本当に強かった。地元マツダでの胴上げは逃したが、2位・阪神の本拠地・甲子園で37年ぶりとなる連覇を達成。8月末に追撃を受ける形にはなったが、1年を通じて緒方カープは昨年を上回る強さを発揮した。本当に素晴らしい連覇だったと思う。

 開幕からの戦いを振り返ってみると、個人的には不安材料の方が多かった。精神的支柱だった黒田さんが抜け、3月31日の開幕戦で昨年の沢村賞投手・ジョンソンが4回でKOされた上に後日咽頭炎からの体調不良で戦線離脱した。“ポスト黒田”と目された2年目・岡田も開幕2戦目で制球難を露呈してKOと、連覇のカギを握る投手陣が大きな不安をのぞかせた。正直言って「この先、大丈夫かな…」と思ったのだが、この心配は完全に杞憂(きゆう)に終わった。

 球団は今シーズンの重点ポイントとして『開幕ダッシュ』『交流戦』『9月戦線』の3つを挙げていたという。7、8月の暑い時期に必ず疲労のピークが来る。その前に貯金を蓄え、最後の9月戦線でラストスパートをかける-。そんな球団の青写真通り、開幕2戦目から10連勝を飾り、交流戦もトップのソフトバンクと並ぶ12勝6敗の好成績で終えた。最後の9月戦線も優勝を決めた18日まで11勝2敗で突っ走った。すべて計画通りに行ったのだから恐れ入る。

 ジョンソンの穴を埋めた薮田、岡田の活躍に加え、中継ぎ陣では一岡、中田が勝利に大きく貢献した。打線では「タナキクマル」の3人が文字通りチームをけん引し、4番・鈴木の成長を手助けした。松山に安部が台頭し、西川やバティスタという新たな戦力も連覇にひと味加えた。「巧さ」の色合いが濃い選手が多いが、今年はそこに「強さ」が加わった感じがする。体力面と共に、逆境に負けない精神的な強さが各選手に備わった。

 そんな伸び盛りの選手たちを「つかず離れず」の絶妙な距離感で引っ張ったのが緒方監督だった。今年の宮崎・日南春季キャンプ初日のことだ。25年ぶりリーグ優勝に浮かれることなく、緒方監督も選手も黙々と練習をこなしているのが印象的だった。ジョンソンや野村、中崎といった前年最後まで頑張っていた主力も第1クール初日からブルペンに入った。緒方監督の「緩めるな?」というメッセージだったのだと思う。春先のWBCに菊池、田中、鈴木の3人が抜けることを考慮し、若手の活性化も促した。

 5月初旬、菊池が体調不良でスタメンを外れる時期があった。その間、チームは阪神に9点差を逆転されるなど、低迷期にあった。それでも慌てず体調の回復に専念させた。足の状態が良くない、という情報だけは耳に入ったが、それ以上は全く聞こえてこなかった。それだけ情報管理が徹底していたということだが、緒方監督の菊池への配慮を物語るものと言える。

 9月5日の阪神21回戦(マツダ)で逆転サヨナラ勝ちし、カープの連覇を確信した。年間を通じて強かったのだが、8月末の阪神の猛追は気持ち悪かった。金本阪神はゲーム差以上に厄介な相手に育ちつつある。すごいスピードで階段を上がっているようにも感じる。来年、球団初の3連覇を狙う上で、本当に手ごわいライバルになるに違いない。胴上げを決めた甲子園での一戦を見て“カープ新時代”を喜びつつ、そんな思いを抱いた。

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