『広陵中村』獲得でさらに常勝カープは盤石に
カープが先日、来る26日のドラフト会議で広陵・中村奨成捕手(18)を1位指名することを事前公表した。夏の全国大会が始まる前に球団関係者からチラッと聞いていたのは「投手を強化したい」ということだったが、久々に現れた地元のスター候補生を逃してはならない-という結論に至ったのだろう。高卒捕手を1位指名するのは2003年の白浜(広陵)以来、14年ぶりだという。私個人としても中村の1位指名には大賛成だ。
あるスカウトは「もし(中村が)獲得できれば15年は捕手はいらない」と話していたが、現時点でもカープの捕手層は厚い方。ベテラン石原との併用だった会沢が攻守共に成長し、それに続く磯村も頭角を現してきた。そこに高卒ルーキーの坂倉だ。7日に行われたファーム選手権でも勝ち越し3ランを放ってMVPに輝くなど、プロ2年目の来季に向けて強烈にアピールした。そんな坂倉と年の近い中村を1位で獲ろうという意図はいくつかあるとは思う。三塁コンバート案も考えられるが、まずは強肩強打の捕手として坂倉らとの競争になる。これがチーム全体にいい影響を及ぼすと個人的には思っている。
我々の時代には、強いチームには“正捕手”と呼ばれる選手がいた。例えばヤクルトの古田(敦也)さんや、横浜から中日に移籍した谷繁(元信)さん。阪神の矢野(燿大)さんや、若き日の巨人・阿部もその1人だろう。いずれもリーグを代表する捕手だった。カープで言うと西山(秀二=本紙評論家)さんがそれに該当するが、以降は2番手捕手との“併用時代”が長く続いている。石原にしたって昨年引退した倉との併用のイメージが強く、今も会沢がメーンであるが、投手に応じて石原や磯村にも出番が回ってくる。もし中村を首尾よく獲得でき、順調に成長したならば“鯉の正捕手”になるかもしれない。もちろん、多くのライバルたちとの競争に勝たないといけないが…。
肩の強さに加え、足も相当速い。その上にあの打力。甲子園での試合を見たが、インサイドの捌きは天性のものだろう。巨人・坂本を参考にしたとも聞くが、大きな構えでもシュアな打撃ができ、かつ遠くに飛ばせる。坂本のような勝負強い打者になってほしいと思うし、4番を打つ鈴木誠也とのコンビも早く見てみたい。
ただ、入団後は2軍からのスタートになるはずで、まずはプロの投手の球に慣れることだ。2軍とはいえ、高校生のレベルとは全く違う。捕手としては各投手の球を毎日受け、コミュニケーションを取って配球を覚えることが先決だし、打者としても木製バットに早く慣れてプロの球筋を頭にたたき込むべしだろう。「対応力」というのが大事になってくる。カープに入ってくれればいいが、もし他球団に指名されても、彼の課題は変わらない。
いよいよ迫ってきたドラフト会議。万が一、中村が競合して抽選に漏れた場合、誰を外れで指名するのか。もし、中村を三塁で使う意図があるのなら、同じく三塁を守れる野手の指名になるだろうし、そうでなければ当初の計画通り投手を指名するに違いない。このあたりに球団の「戦略」があり、見る側にとっては面白いところだと思う。
ここ10年の1位選手を見ると、10人中7人が今年1軍で相応の結果を残し、リーグ連覇に貢献した。菊池や鈴木、薮田など2位の選手もチームの中心的役割を負っている。こうして見ると、「即戦力」とファームからの「叩き上げ」が見事に融合した結果がこの連覇になったと言える。中村を獲るだけでもしめたものだが、それ以下の選手にもぜひ注目していただきたい。