蒼国来896日ぶり復帰「全ての人に感謝」

 「大相撲名古屋場所初日」(7日、愛知県体育館)

 大相撲の八百長問題をめぐる裁判で解雇無効判決を勝ち取った西前頭15枚目蒼国来(29)=荒汐=が、2011年初場所以来、14場所ぶりの本場所復帰を果たした。新入幕の徳勝龍(26)=木瀬=に押し出されたが、観戦に訪れた裁判弁護団や支援者約250人の大声援を受け、復帰の喜びと感慨を口にした。自身初の綱とりに挑む大関稀勢の里(27)=鳴戸=は豪風(34)=尾車=を押し出して白星発進。白鵬(28)=宮城野、日馬富士(29)=伊勢ケ浜=の両横綱は安泰。大関陣では鶴竜(27)=井筒=がただ一人黒星スタートとった。

 896日ぶりの本場所は厳しく、そして温かかった。蒼国来は立ち合いから徳勝龍にとったりで右に動かれ、体勢を崩したまま一方的に押し出された。ブランクの影響を物語る完敗に「動きについていけなかった」と反省したが「まだ初日なので。一日一日思い切りいく」と、前を向いた。

 それでも胸を張って土俵を下りた蒼国来は、一瞬笑みを浮かべた。「緊張よりも先にうれしさがあった。これだけ応援してもらうのは初めて。ありがたかった。親方、おかみさん、関係者の方、すべての人に感謝したい」と、感慨深げだった。

 大声援だった。裁判をともに戦った弁護団や署名運動などを行った支援者、約250人が応援に駆けつけた。「蒼国来、おかえり」と記された青色のTシャツ姿。同じ文言の縦80センチ、横3メートルの大応援幕も登場した。

 幕内土俵入りでは弁護団から贈られた化粧まわし姿で天を見上げた。「土俵の神様に帰ってきました、と言いました」。会場入り後は北の湖理事長(元横綱)から「がんばれ」と声をかけられた。支援者が資金を出し合った、新しい青の締め込み姿で、取組後は敗者としては異例、NHK中継でインタビューを受けた。蒼国来復帰は歓迎ムード一色だった。

 力士として全盛期の2年半を失った事実は変わらない。それでも「前に進むことしか考えていない」と言いきる蒼国来。師匠の荒汐親方(元小結大豊)も「今日より明日、明日よりあさってとなればいい。立ち合いで自分から思い切りいっていた。それはいいこと」と評価した。今場所の目標は勝ち越し。次は勝って胸を張る。

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