稀勢、痛恨黒星…綱とり振り出しに
「大相撲名古屋場所千秋楽」(21日、愛知県体育館)
稀勢の里は琴奨菊との大関対決に寄り切られて敗れ、来場所に綱とりをつなげる条件の12勝に届かなかった。伊勢ケ浜審判部長(53)=元横綱旭富士=は、稀勢の里の綱とりが振り出しに戻ったことを明言した。13日目で3場所連続26度目の優勝を決めていた白鵬は、結びの横綱対決で押し出されて連敗を喫し、13勝2敗に終わった。日馬富士は辛くも2桁の10勝に乗せた。
稀勢の里は諦めたように土俵を割った。館内が悲鳴に包まれた瞬間、来場所に綱とりをつなげる夢が散った。先場所に続いて、千秋楽で琴奨菊に痛恨の黒星だ。
前日に白鵬の連勝記録を止めたことが重荷になったのか。動きが硬い。最初はつっかけて2度目の立ち合い。左はハズ押し、右で上手を狙ったが、逆にあっさり右上手を許し、自身はまわしを両方取れない最悪の体勢に。半身で耐えたが、力なく寄り切られた。
顔をゆがめて支度部屋に戻った稀勢の里は、大きく息を吐き「クソッ」と声を出した。普段の舌打ちではなく、ため息を繰り返した。固く締めたテーピングを切るはさみを落とし、目頭を押さえた後は、目が少し潤んでいた。問いかけには一切応じなかった。
前半の3敗で白紙としながら、12勝で綱とり継続との条件を掲げた北の湖理事長(元横綱)は「来場所を突っ走って優勝すれば。ムードもあるので、審判部に聞いてください」とかばった。しかし、伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)は「11勝は大関として普通の成績。綱とりは厳しい。15戦全勝しても流れはそう」と切り捨てた。
3代目若乃花以来、15年ぶりの和製横綱誕生を熱望する協会の事情をもってしても、11勝ではどうしようもない。精神面の課題を露呈した稀勢の里は「あ~あ」と、落胆して帰りの車に乗り込んだ。