内村航平、20年「東京五輪」への思い

 それは限界を超える挑戦になる。体操のロンドン五輪男子個人総合金メダリストの内村航平(24)=コナミ。世界選手権でも前人未到の3連覇中の“絶対王者”は、そのキャリアの最後の大会に、2020年“東京五輪”を熱望している。ロンドン五輪後「東京なら出て、金メダルを狙いたい」と話してきた内村は、開催地決定1カ月を切った今も「その気持ちに変わってない」と、真剣な表情で語ってみせた。

 7年後、内村は31歳となる。選手としてのピークを20代前半で迎える体操の世界。30代で現役を続ける選手はほとんどいない。ただ、4月に誕生した第1子の長女の存在が、東京開催への思いをより強くさせている。

 「なんか合宿期間だけで(会えなくて)寂しい。寝顔を見るだけで疲れが吹き飛びますから」と、すっかり子煩悩ぶりを見せるようになった内村パパ。東京開催の頃には小学生となる娘に「変な演技を見せたら怒られそう。なんか家でグータラしているところしか見せられそうにないし、いいところを見せたい。自分の演技を覚えていてほしい」と、集大成の演技を見せるつもりでいる。

 忍び寄る体力的な衰えは、内村自身感じつつある。「年は感じますね。いろんな人に聞いても、24、25歳が一番しんどくなる年みたい。疲労の回復が遅くなってきていると思う」。ただ、これまでどんな常識も覆してきた王者には、この“難敵”と上手に付き合っていく自信も確信もある。「焦りはないです。こんなもんだろうと思いながらやっているので。ここを乗り越えないとリオもないと思うんで」と、サラリと言ってのけた。

 3年後のリオデジャネイロ五輪、そして7年後の“東京五輪”に向けた取り組みを、すでに始めている。個人総合4連覇の懸かる今年の世界選手権(9月30日開幕・アントワープ)では、難易度を示すDスコアを抑え、出来栄えを示すEスコアで勝負する。

 「今年の目標は無理をしないこと。6割ぐらいの力でやるつもりでいる」。6割という数字の裏には、肉体的な負担を減らすという面だけでなく、究極の美しい体操を追求するという意味も込められている。

 最近、内村は過去の自分の演技の映像を見ながら、技に修正を加えるという練習法を取り入れた。「今までいろんな大会を経験してきて、それぞれにいい演技があった。映像を見ながら、思い出しながら、戻しているという感じ。魅せ方や美しさを‐」。例えば平行棒では北京五輪の演技を参考にしているという。「腕で受ける技は、今よりもキレがあるんですよ」。過去の自分から学び、6種目ミスなく完璧にこなせる演技構成を追求することで、今後に向けた“土台”を作り上げている。

 現在は無敵を誇る個人総合。ただ、加藤凌平、野々村匡吾(ともに順大)、白井健三(神奈川・岸根高)といった新世代も着実に育っているだけに、将来的にはオールラウンダーとしてのこだわりを捨てる覚悟もできている。

 20年五輪に向けて「(個人総合で)いけたらいってみたいけど」と笑いながら、「6種目は難しいでしょうね。床と鉄棒を頑張って、あとは絶対失敗しない演技で代表に入りたい。リオまでは個人総合ですけど、東京は若いやつが頑張れと」と、スペシャリストとしての代表入りを思い描いている。

 運命の開催都市決定は9月7日(日本時間9月8日早朝)。2020年東京五輪、体操男子団体決勝、最終種目の鉄棒‐。内村航平が完璧な着地で日本に再び“栄光の架橋”を掛ける。そんな日がやってくるだろうか。

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