20歳の高藤が金 逆風柔道界に新風

 「柔道世界選手権」(26日、リオデジャネイロ)

 男女各1階級を行い、男子60キロ級で高藤直寿(20)=東海大=が初優勝した。男子60キロ級での世界選手権制覇は1997年大会の野村忠宏(ミキハウス)以来9大会、16年ぶり。女子48キロ級の浅見八瑠奈(25)=コマツ=は決勝でウランツェツェグ・ムンフバット(モンゴル)に一本負けし、3連覇は成らなかった。日本勢が女子48キロ級で優勝できなかったのは2005年カイロ大会以来。

 逆風続きの日本柔道界へ、20歳の高藤が新しい風を吹き込んだ。表彰台で日の丸を見つめる両目には涙が光り「素直にうれしい。あこがれの舞台で試合ができて楽しかった」と感激に浸った。

 初の大舞台に「最低でも最高でも金メダル」と挑み、豪快な柔道で有言実行を果たした。最大の武器は海外勢に組み負けない強さ。密着してくる力自慢たちを「(重心を)ずらして返せるので好き」とむしろ歓迎する。

 準々決勝で古傷の左太もも裏を痛めたが、ものともしなかった。韓国選手との準決勝は肩車の技ありで先行し、強引に奥襟を狙ってきた相手を大腰でたたきつけて合わせ技一本。体幹が強いダシダワーとの決勝も懐に潜り込んで肩車で一回転させ、一度は一本の判定が出た。相手が腹ばいでこれは取り消されたが、攻め続けて指導数の差で勝利を収めた。

 日本柔道は昨年のロンドン五輪で惨敗し、その後は不祥事が相次いだ。再起を図る男子を率いる井上監督にとっては重圧のかかる初の世界選手権。高校、大学の後輩にあたる高藤は「監督のために、何が何でも金メダル第1号という気持ちもあった」と胸を張った。

 3年後に五輪を控えるリオデジャネイロでその力を誇示した。若き世界王者は笑顔を引き締め「ここがゴールじゃない」と自覚を口にした。

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