海老沼V2“右手1本”執念の大内刈り

 「柔道世界選手権」(27日、リオデジャネイロ)

 男女各1階級が行われ、男子66キロ級でロンドン五輪銅メダルの海老沼匡(23)=パーク24=は決勝でアザマト・ムカノフ(カザフスタン)から大内刈りで一本を奪い、6試合全て一本勝ちで2連覇を達成した。同級の福岡政章(29)=ALSOK=は銅メダルを獲得した。男子は60キロ級の高藤直寿(東海大)に続く優勝。初の金メダルゼロと惨敗したロンドン五輪からの復活へ、昨秋から井上康生監督(35)が率いる“康生JAPAN”には最高の序盤戦となった。

 思わず悲鳴を上げたが、逆に奮い立った。決勝の3分すぎ。海老沼はムカノフに立った状態から左肘をきめられ、そのまま寝技に持ち込まれた。

 反則を宣告されてもおかしくない危険なわき固めに「腹が立った」。傷は負ったが、闘志には火が付いた。左手を満足に使えない状態で、最後は執念の大内刈りで相手を畳にたたきつけた。6試合一本勝ちでの2連覇にガッツポーズをつくり、雄たけびを上げた。「前回はがむしゃらに取りにいった金メダルだったが、ロンドン五輪を経て、少し進化できた」と実感を込めた。

 昨夏の五輪は銅メダル。準々決勝は畳の外からの指摘で旗判定が覆る異例の展開で“逆転勝利”を収めたが、気持ちを切り替えられず準決勝で敗れた。

 今回は大きなピンチにも動揺せず、ぎりぎりの勝負を制して「強い気持ちを持って闘った」と精神面を最大の勝因に挙げた。相手のムカノフも「骨が折れたと思ったが、攻めてきた。サムライだ」と脱帽するしかなかった。

 “魔法の言葉”に支えられた。宿舎を出発する前のことだ。井上監督に「おまえは世界一にふさわしい人間だ。誰よりも努力して、ひた向きにやってきた。自信を持てばいい」と諭された。右足首痛で調整不足だったが、これで力が沸き上がった。左肘を痛めた決勝を含めて6試合でオール一本勝ち。試合後は「井上先生の期待に応えたいのが一番だった」と漏らした。

 前日は60キロ級で20歳の高藤が初優勝して勢いをつけ、この日の海老沼は最後まであきらめない姿勢を示した。日本男子の井上監督は「一回り大きくなった姿を見せてくれた。海老沼の強い気持ちはあらためて素晴らしいと言いたい」と目を細める。再び追われる立場になった23歳の世界王者は「リオデジャネイロ五輪まで気を抜けない」と笑顔を引き締めた。

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