大野も金 康生ジャパン3階級制覇
「柔道世界選手権」(28日、リオデジャネイロ)
男子73キロ級で大野将平(21)=天理大=が初優勝した。60キロ級の高藤直寿(20)=東海大、66キロ級の海老沼匡(23)=パーク24=に続き、日本男子は開幕から3日連続の金メダルラッシュとなった。男子が最軽量級からの3階級を制したのは、全6階級を制覇した1973年ローザンヌ大会以来、40年ぶり。初出場の大野は鮮やかな跳ね腰で決めた決勝を含む6試合を全て一本勝ちと、積極的な柔道で勝ち抜いた。
快進撃する日本男子の勢いに、73キロ級の21歳、大野が見事に乗った。彗星(すいせい)のように現れたヒーローの原点は、古賀稔彦や吉田秀彦ら五輪金メダリストを生み、昨年度限りで閉塾した柔道私塾の講道学舎だ。
小学校卒業と同時に上京して入門し、東京・弦巻中、世田谷学園高の6年間、猛稽古で鍛えられた。同じルートの2年先輩・海老沼が前日の66キロ級を制した。テレビ観戦した大野は「けがをした左手で釣り手を持って攻めた。すごく刺激を受けた」と興奮を隠さなかった。
苦しんだ準々決勝のエルモント(オランダ)戦では、観客席の最前列から「ここが勝負だぞ」と叫ぶ海老沼の声が耳に届き、逆転勝ち。2人の絆と底力に、井上康生監督は「講道学舎のすごさをあらためて感じた」と舌を巻いた。
中学時代に棟田康幸や泉浩ら重量級の先輩に胸を借りて「動きを最も確認できる稽古方法」を自分なりに確立した。「古賀さんや吉田さんといった学舎の先輩に憧れてやってきた」とセンス抜群の立ち技にこだわる。“学舎”で培った魂を、世界の畳で体現した。