カーママ小笠原&船山が涙の代表切符
「カーリング・ソチ五輪世界最終予選日本代表決定戦」(17日、どうぎんカーリングスタジアム)
4戦先勝方式の女子決勝第4戦を行い、北海道銀行が中部電力を8‐5で下し、1次リーグの2試合を含めた対戦成績を4勝2敗として、最終予選(12月11日開幕、ドイツ・フッセン)の日本代表に決定した。チームを率いる02年ソルトレークシティー、06年トリノ両五輪代表の小笠原(旧姓小野寺)歩(34)、船山(旧姓林)弓枝(35)の“元祖カーリング娘”が、今度は“カーリングママ”としてソチ五輪出場を狙う。日本選手権3連覇の中部電力は五輪への道が断たれた。
熱い涙が、氷上へとこぼれ落ちた。決勝第4戦の最終エンド、同じく母として苦楽をともにしてきた北海道銀行のサード船山が、相手のストーンを2つはじき出す会心のダブルテークアウトで試合を決めると、小笠原は顔をくしゃくしゃにして、歓喜の声を上げた。
トリノ五輪後に現役を引退。“元祖カーリング娘”が結婚、出産を経て、“カーリングママ”となって2大会ぶりの五輪への挑戦権をもぎ取った。
「詰まっていたものがあふれ出ちゃって…」。10年バンクーバー五輪はテレビで観戦し、闘志に再び火がついた。10年11月に現役復帰。しかし、3年間は決して楽な道のりではなかった。
チーム編成では中京大で陸上をしていた旧常呂町出身の小野寺をスカウトするなど奔走。自らカナダに出向き、チーム青森時代のコーチだったフジコーチを招へいした。しかし、選手としての勘はなかなか戻らず、昨年1月の日本選手権では自らの不振で4位に終わった。「復帰を後悔したこともあった」といい、家族と過ごす時間も大きく減った。
苦労は今大会で実を結んだ。決勝に入り、ショットを乱した小笠原を、チームメートが救った。練習からしかることも多かった小野寺ら若手が、好ショットを連発。テレビで見ていた4歳の長男からは「ママ、へたくそ~」とカツを入れられた。「出産で度胸がついたと思ったけど、まだまだ。1人産んだぐらいじゃ足りないのかな?」と笑ったが、周囲に支えられて、再び五輪を狙える場所までたどり着いた。
試合後は、中部電力の市川主将と涙を流しながら抱き合い、健闘をたたえ合った。「中部電力が、日本の道筋をつくってきてくれた。美余の涙を無駄にはできない」‐。
五輪へは世界最終予選で2位以内が条件だが、日本女子は4大会連続で五輪に出場中。小笠原は「みんなの思いを背負って、プレーしないといけない」と口元を引き締めた。長い時を経て、再び手にした代表のバトン。すべてのカーラーの思いとともに、日本を五輪へと導く。