レスリング女子で五輪３連覇を達成した吉田沙保里（３１）＝ＡＬＳＯＫ＝の父で、日本代表コーチの栄勝（えいかつ）さんが１１日、くも膜下出血のため急逝した。６１歳だった。１１日午前７時ごろ、伊勢自動車道上り線の路肩に止まった車内で、栄勝さんがぐったりした様子で倒れているのを別の車の運転手が見つけ、１１０番した。病院に運ばれたが、約２時間後に死亡が確認された。葬儀・告別式は１４日の午後０時３０分から、三重県津市の津斉奉閣で。喪主は長男の勝幸さん。

　吉田は車で名古屋から東京の味の素ナショナルトレーニングセンターに向かう途中、訃報を聞き、最寄りだった掛川駅から引き返したという。大きな悲しみの中、日本レスリング協会を通じ「申し訳ないが、しばらくの間そっとしておいてください」と、コメントを発表した。

　訃報を聞いた時、同乗していた日本代表の栄和人監督（５３）は「沙保里の兄から私に電話があり、代わった。沙保里は気が動転して、泣き崩れていた」と説明した。１３日に通夜、１４日に告別式が行われるが、レスリング女子Ｗ杯（１５、１６日、板橋区・小豆沢体育館）出場について、兄の栄利さんは「試合に出ることは家族の夢、おやじの夢でもある。それをかなえてほしい」と、１４日の告別式の後にも上京させる考えを語った。

　栄勝さんは自身も元レスリング選手で現役時代は１９７３年の全日本選手権フリースタイル５７キロ級で優勝。その後はレスリング教室を主宰し、吉田を幼い頃から指導してきた。２００８年に日本女子代表のコーチに就任し、１２年のロンドン五輪では吉田のセコンドに付いた。この日から始まったＷ杯に向けた合宿にも、コーチとして参加する予定だった。

　栄監督は「１４連覇を達成して、国民栄誉賞までもらえた。幸せな人生だったんじゃないかな」と話した一方で、「悔しいのは沙保里の結婚と、子供を見届けないうちにあの世に逝ってしまった。娘の人生の幸せを見届けなかった栄勝さんに、『何してんだよ』と…」と、涙を流した。