沙保里涙のW杯出場決意「父も一緒に」
11日に父栄勝さん(61)をくも膜下出血で亡くしたレスリング五輪3連覇の吉田沙保里(31)=ALSOK=が13日、東京・小豆沢体育館で15日に始まる女子ワールドカップ(W杯)に出場することを表明した。津市内で通夜に参列し、涙の決断。「何があっても出ろ」という父の教えを守り、マットに上がる。
天国の父に誓う出場表明だった。通夜を前に斎場で報道陣の前に立った吉田は、涙で声を詰まらせがらも自らの言葉で言い切った。
「お父さんはレスリング一本で、何よりもレスリングを優先してきた人なのでこのワールドカップは…。出場します。お父さんも一緒に戦ってくれると思う」
吉田は11日朝、訃報を聞いて実家に急行。この2日間、実家の道場に横たわる父に寄り添い、泣き明かした。「ロンドンで肩車できて良かったよ」「お父さんがレスリングをやっていたから五輪3連覇できた。本当にありがとう」。そう語りかけた。
中3のとき、骨折した手首にボルトが入っていても「出ろ」と言った父。親元を離れた後も「練習してるか」が口癖だった。高校も大学も吉田は父の言う通りに進み、成功につながった。「レスリングをやっているのが一番喜ぶと思う」。だから今回も教えの通り進む。
父の教えはタックルだけではない。「人に迷惑をかけるな」とも言われてきた。女子日本代表コーチだった父は11日午前7時すぎ、津市の伊勢自動車道の車内で倒れているのが発見された。この時、路肩に止めた車のギアは「P」に入っていた。
「最期に見本を見せてくれた。責任持って行動していたと思う」。W杯は団体戦。五輪の階級変更に伴い、53キロ級では初めての大会。ぶっつけ本番。不安はある。それでも迷惑はかけられない。
「新しい階級を楽しみにしていたと思う。教えてもらったことを今まで通り変わらず、攻めていきたい」。14日は午後0時半からの告別式に参列後、午後7時に始まる計量に間に合うように東京へ向かう。