沙保里完璧V!お父さん勝ったよ
「レスリング女子W杯」(16日、小豆沢体育館)
11日に最愛の父栄勝さん(享年61)を亡くした53キロ級の吉田沙保里(31)=ALSOK=がロシアとの決勝に出場し、マリア・グロアに5分33秒でテクニカルフォール勝ち。日本は8階級全員が勝利する完ぺきな内容で、2年ぶり7度目の優勝を決めた。悲しみの癒えない中、大会に出場した吉田だったが、天国の父に笑顔で最高の結果を届けた。
8階級全勝という最高の形での優勝に、マット上に歓喜の輪が広がる。その中心には吉田。チームメートに抱えられ、3度宙を舞った。「最高にうれしかった。胴上げの最中に、お父さんに『やったよ!勝ったよ!』と」。栄勝さんが礎を築いてきた日本女子レスリング。チーム全員で、“最強”を証明した。
吉田はこの日も強かった。次々とポイントを重ね、テクニカルフォール勝ち。試合前と試合後には、セコンドの栄監督が持つ栄勝さんの遺影をがっちりとつかんだ。「いつも握手してから試合に行っていた。『行ってきます!』『やったよ!』の気持ちを込めた」。
実は3月に入り、左膝の内側じん帯を痛めていた。試合前の重要な時期にスパーリングを積めず。W杯に向けて不安を抱えていた矢先に、栄勝さんの不幸が重なった。出場を悩んだこともあった。それでも「何事においてもレスリング優先」が、栄勝さんの口癖だった。父の遺志とともに挑んだ試練の試合で、底力を見せて最高の結果を導き出した。
遺骨を持って、表彰台の一番上に上がった。これからもレスリング人生は続く。「父は『やれるところまでやれ』と言っていた。父に教わったレスリングをやれるところまでやっていきたい」。4連覇の懸かる2016年リオデジャネイロ五輪、そして20年東京五輪へ‐。父と歩む最強伝説は、まだ終わらない。