桐生が初の日本一!9秒台届かずも貫禄

 「陸上日本選手権・最終日」(8日、とうほう・みんなのスタジアム)

 男子100メートル決勝は、桐生祥秀(18)=東洋大=が10秒22で初優勝した。すでに日本陸連が定めたアジア大会派遣設定記録Aを突破しており、今回の優勝で代表入りが決まった。女子100メートル決勝は福島千里(25)=北海道ハイテクAC=が11秒69で5連覇し、4年連続で200メートルとの2冠を達成した。男子400メートル決勝は金丸祐三(26)=大塚製薬=が10連覇した。韓国・仁川アジア大会は9月に行われる。

 雨粒を切り裂き、力強くゴールを駆け抜けた。日本陸上界悲願の9秒台はならなかったが、何よりも欲しかったのは日本一の栄冠。桐生はゴール直後、納得したように一度、うなずいた。「今年は優勝しか狙っていなかったのでうれしい。タイムは終わってから見ればいいかなと思っていた」。笑顔の中に安堵感を漂わせた。

 勝負に徹した。7日の予選では中盤以降、流した余裕の走りで10秒15をマーク。夢の記録へ周囲の期待は高まったが、桐生の心は乱れなかった。決勝では2位に終わった昨年同様、スタートで山県に前に出られたが、冷静に対応。狙い通りに中盤から一気の伸びで他を圧倒した。

 昨年4月に高校生で10秒01をマーク。高まる9秒台への期待が重圧となり、その後は走りを乱した。迷いを断ち切ってくれたのは、世界最速の男の言葉だ。昨年11月、日本に来日した世界記録保持者のウサイン・ボルト(ジャマイカ)と対面する機会があった。悩める桐生にボルトは言った。「楽しめ。国のために走るな。自分のために走れ。それが日本のためになる」。9秒台は、あくまで勝利の延長線上にある。純粋に試合を楽しむことを心掛けることで、持ち前の伸びやかな走りを取り戻した。

 レース後は10連覇した男子400メートルの金丸の名を挙げ「いけるところまで勝ちたい。金丸さんが連覇を続けている。自分も続いていきたい」と、力強く桐生時代の到来を宣言した。秒読みに入ったといっていい“10秒の壁”の突破。その瞬間を心待ちにしながら、桐生は勝利を積み重ねていく。

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