豪栄道「大和魂貫く」日本人の心で口上

 大和魂を貫く!日本相撲協会は30日、愛知県体育館で大相撲秋場所(9月14日初日・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、名古屋場所で12勝を挙げた関脇豪栄道(28)=境川部屋=の大関昇進を満場一致で決めた。新大関の誕生は2012年春場所後の鶴竜以来。愛知県扶桑町の部屋宿舎で行われた伝達式で豪栄道は「これからも大和魂を貫いてまいります」と口上を述べた。

 確かに、その言葉には日本人の心がこもっていた。午前9時57分、豪栄道は師匠(元小結両国)と使者を務めた一門の出来山理事(元関脇出羽の花)、大鳴戸親方(元大関出島)を迎えた。大関昇進決定の朗報を伝えられると、次の瞬間、よく通る声が式場に響き、聞く者の胸を打った。

 「謹んでお受けいたします。これからも大和魂を貫いてまいります。本日はまことにありがとうございました」

 「大和魂を貫く」は師匠に相談して選び、10回以上練習したという。「日本人の我慢強さ、潔さ。この言葉にはいろんな意味がこめられている。そういう精神で今までやってきた。今の自分に一番必要なもの。その気持ちがシンプルに伝わったと思う」と説明した。

 この日が偶然にも52回目の誕生日だった師匠は万感の思いに浸った。「豪栄道はあきらめずにコツコツコツ稽古を一生懸命にやってきたから、相撲の神様がちゃんと見てくれたと思います。誕生日は毎年ひとりで酒食らって寝るだけ。今日は最高のプレゼントをいただきました」。普段厳しい表情が緩んだ。

 今年の春場所では12勝を挙げたが、夏場所は8勝止まり。大関昇進が遠のき、気持ちが落ち込んでいたとき、おかみさんの美奈子さん(51)が一通の手紙をくれた。「これからも一緒に頑張ろうと。入門して初めてもらったので、胸が熱くなった。これから恩返しをしていこうと思いました。精一杯の感謝の気持ちを伝えたい」。幼少時は負けず嫌いなガキ大将がまっすぐで心優しい男に成長した。

 28歳3カ月24日での大関昇進は年6場所制になった58年以降初土俵では6番目のスロー出世だが「次は優勝です。課題はあるけど、克服すれば、優勝争いできる」と早くも目標を口にした。大関で鶴竜を下し、日馬富士を退け、白鵬を苦しめれば、待望の日本人横綱も手の届くところに近づいてくるだろう。夢はまだ終わらない。

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