錦織、日本人初決勝!四大大会初V王手
「全米OPテニス」(6日、ニューヨーク)
男子シングルス準決勝で、世界ランク11位の第10シード、錦織圭(24)=日清食品=が、同1位で第1シードのノバク・ジョコビッチ(27)=セルビア=を3‐1で破り、四大大会シングルスで男女を通じて日本人で初めて決勝に進んだ。日本選手が四大大会シングルスで第1シードに勝ったのも初めて。8日午後5時(日本時間9日午前6時)過ぎから行われる世界ランク16位の第14シード、マリン・チリッチ(25)=クロアチア=との決勝へ、日本中の夢を背負ってコートに立つ。
ジョコビッチのフォアの返球がベースラインを越えた。それを見届けた錦織はラケットを放り投げ、全身で喜びを表した。日本人が初めて決勝行きを決めた歴史的シーンに、スタンドを埋めた観客は「ケイ!!」「ケイ!!」と名前を連呼した。
コート上の温度は35度を超えていた。3時間近い熱戦にも、錦織スマイルがはじけた。何度も両手を振り、大歓声と拍手のシャワーを浴びた。
4回戦で4時間19分の死闘の末、第5シードのラオニッチ(カナダ)を下したとき、錦織は「勝てないという相手はいない」と断言した。世界ランク1位を相手に、その言葉を体現してみせた。
体力に勝るジョコビッチは長いラリーを仕掛けて長期戦の構え。思惑を読んだ日本のエースは、チャンスとみると、ベースラインの内側に入り、強烈なフォアや角度のあるショットで押し込んだ。「出だしからしっかり自分のテニスをすることを心掛けた」。第1セットを先取した。
第2セットは左右に振り回され、1‐1から5ゲームを連取された。「これを続けられたら、勝つチャンスはない」‐。第3セットは攻めに出るタイミングをさらに早くした。鋭い返球で威圧してミスを誘い、タイブレークの末にものにした。
第4セット。フォアハンドのクロスラリーで主導権を握った。勝負どころでポイントを奪えば、大きな声を出して自らを鼓舞した。第9ゲームでは、この日最速の195キロのサービスエースを決めた。世界最強だったはずの男に「今日は彼の方が上だった」と言わしめた。
もっとも、快挙を成し遂げた満足感はない。もう一つ、大きな仕事が残っている。「レコード(記録)は気にしない。決勝へしっかり気持ちの準備を整えたい」と、標的を切り替えた。
決勝では、同じく四大大会初優勝をかけるチリッチと顔を合わせる。過去、全米では2度対戦して1勝1敗だが、通算では錦織が5勝2敗とリードしている。
「チリッチは展開が速いプレーに変えてきている。しっかりしたディフェンスが必要。気持ちはしっかり準備しておきたい。このまま調子を落とさずにやれれば、絶対にいける」
すでに歴史の最先端に立った。決勝でそれを、最高の形として塗り替える。