逸ノ城、最速金星 白鵬と1敗対決へ

 「大相撲秋場所・13日目」(26日、両国国技館)

 怪物逸ノ城が結びの一番で横綱鶴竜をはたき込みで破り1敗をキープ。1914年両国以来100年ぶりの新入幕優勝へ大きく前進した。新入幕力士が横綱に勝ったのは1973年9月場所の大錦以来41年ぶり3人目で、初土俵から5場所目での金星獲得は武双山の7場所を更新する最速記録。また新入幕力士が2大関、1横綱を倒したのは史上初の快挙となった。横綱白鵬は大関豪栄道に寄り切られて初黒星。14日目は逸ノ城が1敗で並んだ白鵬に挑戦する。

 一瞬、静まり返った館内から大歓声が沸き上がった。結びの一番で横綱に初挑戦した逸ノ城は立ち合い、199キロの巨体で軽々と左へ変化。鶴竜の頭を大きな右手で押さえて、土俵にたたきつけた。

 07年秋場所の豪栄道以来となる新入幕の横綱戦は、はたき込みでの秒殺決着。それでもニューヒーローの登場に、観客席から座布団が飛んだ。「子供のころテレビで見ていたのと一緒。それを思い出した」と、21歳の若武者は無邪気に笑った。

 結びで横綱と戦うのは初体験。「夢の世界に来たみたい」と初々しいが、勝負となればベテラン力士も顔負けの戦略家になる。前夜は場所前に時津風部屋に出稽古し、鶴竜、白鵬に稽古をつけてもらった際、まったく歯が立たなかった経験からイチかバチかの作戦を立てた。

 それが左への変化。「昨日から決めていました。本当はダメなんですけど、何もしないよりいい。やるなら思い切ってやろうと。もし横綱が落ちなかったら、左上手を取って自分の形に持っていけばいい。うれしいです」と、悪びれる様子もなく振り返った。

 史上初のザンバラ頭での横綱挑戦を制し、この日初黒星を喫した大横綱白鵬と1敗で並んだ。41年前に新入幕で横綱琴桜を破った元大錦の山科親方は「オレの時は8番勝って気が楽だった。逸ノ城は怖いくらい。何と言っても1敗だからね」。北の湖理事長(元横綱)も「あの大きな体ですっと変われる。なかなかできるものじゃない」と舌を巻いた。

 14日目はいよいよ白鵬との直接対決。「特に何も考えず、思い切り当たっていきます」。初土俵から5場所目で早くも伝説を作った怪物。大横綱を倒せば、100年ぶり新入幕優勝が見えてくる。

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