羽生「痛みはあるけど」NHK杯出る!
「フィギュアGPシリーズ第6戦・NHK杯」(28日開幕、なみはやドーム)
フィギュアスケート男子のソチ五輪金メダリストで、今月上旬のGPシリーズ中国杯で閻涵(中国)と激突し負傷した羽生結弦(19)=ANA=がNHK杯に出場することが26日、決まった。この日、日本スケート連盟関係者が見守る中、練習に参加し、出場可能と判断された。NHK杯で3位以内に入れば、自力で日本男子初の連覇が懸かるGPファイナル(12月・バルセロナ)出場が決まる。
選手生命すら危ぶまれた壮絶なアクシデントから、わずか18日。強い意志とともに不屈の王者が、戦いのリンクに帰ってきた。
非公開で行われた練習。関係者によると、羽生はオーサー・コーチ、そしてトレードマークとなったくまのプーさんの人形が見守る中、力強いパフォーマンスを見せた。普段通り心肺機能に負荷をかけるため、マスク姿でリンクに現れると、軽やかな滑りで振り付けを確認。その後、順番にジャンプを跳んでいき、高難度ジャンプにも挑戦。最大の得点源であるトーループ、サルコウの2種類の4回転ジャンプも完ぺきに着氷したという。
練習後に羽生、オーサー・コーチ、帯同ドクター、日本スケート連盟の小林芳子強化部長らで協議し、出場が決まった。本人は報道陣の前に姿を見せず、代わって対応した小林強化部長は「練習はいつも通りに見えた。ドクターの問診結果、医学的所見で異常はない」と説明した。
それでも流血した頭部、下顎だけでなく、腹部、左太ももの挫傷、右足捻挫と、計5カ所にも及んだケガは完ぺきに癒えたわけではなく、小林強化部長によると、本人は「両足に多少の痛みはあるけど頑張ります」と話していたという。
常識的に考えれば、五輪翌シーズンの今季、無理をする必要はないが、それでも出場するのは、今季、五輪王者として認められる演技にこだわってきたからだ。「とにかく全部勝ちたい。(金メダルが)自分の実力だったと認めてもらいたい」と言い続けてきた。
打倒羽生を目指してくるライバルを前に、逃げの選択肢はなかった。突き動かすのは五輪王者のプライドと意地。そのすべてを氷に刻み込む。