レジェンド葛西 最年長記録でのW杯V
「ノルディックスキーW杯ジャンプ男子」(29日、ルカ)
レジェンドがまた快挙を成し遂げた。個人第3戦(HS142メートル、K点120メートル)が行われ、ソチ冬季五輪ラージヒル銀メダルの葛西紀明(42)=土屋ホーム=が、五輪の個人種目を4度制したシモン・アマン(33)=スイス=と合計272・2点の同点で優勝を分け合い、自身のW杯最年長優勝記録を42歳5カ月に塗り替えた。ことし1月のバートミッテルンドルフ(オーストリア)大会以来の勝利で通算17勝目。葛西は1回目に145メートルの最長不倒をマークしてトップに立ち、2回目は131・5メートルにとどまったが、逆転を許さなかった。
1回目は踏み切りで会心の飛躍になることが分かった。葛西は「飛び出した瞬間にぴたっとはまった。そんなことは年間でもあまりない」と気持ちよさそうに振り返った。両腕両脚を開いた独特の姿勢で微動だにせず滑空し、ヒルサイズを3メートルも越えた。全てがかみ合った「パーフェクトな飛躍」でリードを奪い、開幕前は予想もしていなかった勝利をつかんだ。
起床時に腹を触って体脂肪を確認するのが日課だ。この日は「きた。完璧だ」と思った。先週まで1・5キロほど重かった体重を絞り、59・3キロに。走った後に水分を取り、スキーの長さと体重に関する規定にぴったり合わせて試合に臨んだ。
軽くなった体が、昨季から維持している高い技術で空を舞った。有利な向かい風が全選手で最も弱かった2回目は飛距離を落とし、アマンに並ばれたが「同点でも優勝は優勝」と喜びに浸った。
ソチ冬季五輪の活躍で人気者となり、オフは例年のように十分な練習ができなかった。周囲の期待で生まれた「横綱のような負けられない雰囲気」を感じつつ、内心は「今季は勝てないだろう」と思っていたと明かす。
しかし、3位だった前日に続いて表彰台に立ち「同じ条件なら俺が他の選手より上にいると自信が出た」と目を輝かせた。開幕前の「総合30位以内」の目標を大幅に上方修正し「ここまできたなら総合優勝を狙っていきたい」と力強く宣言した。