桐生負けた「悔しさだけしかないです」

 「織田記念国際陸上」(19日、Eスタ)

 男子100メートル決勝が行われ、日本人初の公認条件での9秒台の期待が懸かった桐生祥秀(19)=東洋大=は、悪条件もあり、10秒40(向かい風0・2メートル)で2位に終わった。ケンブリッジ飛鳥(21)=日大=が、10秒37で優勝した。桐生が100メートルで日本人選手に敗れるのは、13年6月の日本選手権以来、1年10カ月ぶり。桐生と同タイムの2位に、北京五輪代表の塚原直貴(29)=富士通=が入った。

 日本では久々に後塵を拝したレースに、桐生は悔しそうに曇天の空を仰いだ。「悔しさだけしかないです」。必死に笑顔をつくろうとしたが、言葉にこもる怒気は隠せなかった。

 記録に関してはどうしようもなかった。起こること起こること全てが、桐生の9秒台への挑戦の妨げとなった。毎年絶好の追い風が吹く織田記念にしては、珍しく向かい風。レース前には強い雨も降り始めた。

 大会最多タイとなる1万5000人が詰めかけたスタジアム。静寂が包む中、スタートの号砲が鳴ったが、機器の誤作動により、やり直しに。「最初のスタートを出た瞬間に重いなと感じた」。マイナスに傾いた気持ちを立て直せず、2回目のスタート。爆発的な加速は影を潜め、中盤から3つどもえの競り合いも勝ちきれなかった。

 3位に終わった前日の200メートルに続く敗戦。2日間で予選も含めて計4本を走ったが、どこか集中力を欠いた走りが目立った。3月のテキサス・リレーで、追い風参考ながら電気計時では日本人初の9秒台となる9秒87を記録。「変な余裕があった。欲が足りなかった」と桐生が話せば、東洋大の土江コーチも「私自身も含めて、気持ちがフワフワしていたのかもしれない」と自戒した。今季初戦で得た自信が心の隙を生んだのか…。

 シーズンはまだ始まったばかり。5月も世界リレー(バハマ)を皮切りにレースが続く。「シーズンはまだある。見ててもらえれば、自己ベストは出る」と桐生。久々の敗北を必ず糧としてみせる。

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