女子マラソン、前田彩里にエースの期待

 久々に日本女子マラソンの“エース”誕生を予感させた。3月の名古屋ウィメンズマラソンで日本歴代8位の2時間22分48秒をマークし、初の世界選手権代表となった前田彩里(23)=ダイハツ=が、世界選手権前最後のレースとなる5月10日の仙台国際ハーフで初のハーフマラソンに挑み、圧巻の走りを披露した。

 名古屋ウィメンズでの転倒で左手を骨折した影響もあり、約1カ月のオフを過ごし、練習再開はわずかレース2週間前。前日会見では「現状を把握するレース。とりあえずケガをせず完走できたら」と控えめに話していた。しかし、序盤から先頭に立ち、レースを引っ張ると、徐々にペースを上げて、同じ世界選手権代表の重友梨佐(天満屋)らを引き離していく。終盤の強烈な向かい風もものともせず、1時間10分24秒でゴール。底知れぬ潜在能力を示した。

 この快走には、指導するダイハツの林監督も驚きを隠さなかった。「練習では1回だけ追い込んだだけで、あとはイージーな練習。状態としては50%もない。ビックリですね」。長らく低迷していた日本女子マラソンのニューヒロイン候補。そんな選手を預かる身として、こんな率直な言葉もつぶやいた。「プレッシャーですね」

 さらなる“伸びしろ”もある。これまで「筋トレ嫌い」で、筋力の弱さを課題として指摘されてきたが、オフ明けから00年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんから伝授された10種の腹筋、お尻回りの筋力トレーニングも取り入れた。

 これは高橋さんが大学(大院大)時代に自ら作り上げたメニューで、「なかなか(5000メートルで)16分が切れなかった時に、これをやり始めて2カ月で15分台が出た」(高橋さん)と、その後、シンデレラストーリーを歩むきっかけとなった筋トレだ。高橋さんはこれを現役時代、10種類×100回を朝、夕で計2000回をこなしていたという。

 前田はまず10回ずつから挑戦中。仙台で高橋さんと再会した際、「もうお腹が引き締まってきたんじゃない?」と聞かれ、「まだまだです。プヨプヨですよ。プヨプヨ系女子です」と笑っていたが、着実に効果は実感している様子。「続けていけば効果がある。頑張りたい」。今後は指導を受けている映像をDVDにしてもらい、それを見ながら“Qちゃんズブートキャンプ”の形で、トレーニングに励む。

 今後は米ニューメキシコ州アルバカーキ、スイス・サンモリッツでの高地合宿を経て、世界選手権(8月・中国、北京)に挑む。日本人最上位で入賞(8位以内)なら、16年リオデジャネイロ五輪代表に内定する。「ここ(仙台)での優勝を自信にして、世界選手権でもいい結果を残したい」。女子では09年世界選手権銀メダルの尾崎好美(第一生命)以来の世界大会メダルへ、進化するシンデレラガールズが疾走する。(デイリースポーツ・大上謙吾)

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