バド山口茜、地元愛貫き五輪出場決める
恐竜で有名な福井県勝山市が生んだ“バドミントン女子の新星”山口茜(17)=勝山高=が、初の五輪出場を目指し奮闘している。1年間の選考レース開幕となるスディルマン杯(5月、中国・東莞)では、日本代表の一員として2戦1勝。史上初の銀メダル獲得に貢献した。現在、日本勢2番手となる世界ランク11位。来年のリオデジャネイロ五輪を射程に捉えた現在の心境を聞くとともに、強さの原動力である地元勝山への思いに迫った。
恐竜の化石発掘が有名で、プロレスラーの天龍源一郎や元広島投手の横山竜士らのアスリートも輩出している福井県勝山市。人口約2万5000人ながらバドミントンが盛んな同地で生まれ育った山口は、高校生ながら現在世界ランク11位で、来年のリオ五輪出場が現実味を帯びてきた。
「保育園や小学生の頃は『五輪に出たい』と言っていたんですが、国際試合にも出て現実味が増したことで、あらためて五輪の難しさ、すごさがわかってきました」。23歳で迎える20年東京五輪についても「世代としては勝負の大会になる」とメダル獲得を見据えている。
昨年は飛躍の1年となった。初めて国際大会に本格参戦するとスーパーシリーズファイナルまで進出。年始に87位だった世界ランクが、年末には12位に急上昇した。世界トップレベルを経験し、「強い選手でもプレッシャーがかかる場面ではミスが出たりすることに気づいた」。国内でも12月の全日本総合を制し、自信を深めた。
そんな山口が5月末、リオ五輪出場へ近づくことよりも地元愛を貫く“男気”ある決断をした。8月の全国高校総体を優先し、同時期開催の世界選手権(ジャカルタ)への出場を辞退したのだ。五輪レースで最もポイントの高い大会を見送るのは極めて異例だが、彼女らしさがあふれた選択でもあった。
山口の強さの源は生まれ育った故郷にある。バドミントンが盛んな土地で、3歳からラケット握った山口も地元の手厚い指導でめきめきと力をつけ、ジュニア時代には全国トップクラスの選手に成長。中学2年の時には市民によって「山口茜を育てる会」が発足し、遠征費などの支援を受けてきた。
進学時も「高校までは勝山を出ないと決めていた」と、全国の強豪校ではなく市内唯一の公立高校に進んだ。進学校でもある勝山高では練習時間が限られているものの、OBらがボランティアで練習をサポート。「地域の人や小学生の頃から一緒にやってる仲間もいる」と、地元でプレーすることに大きな誇りを持っている。
それだけに高校生活ラストイヤーに期する思いは強かった。「勝山に残った理由は地元の仲間と勝ちたかったから。(今年は)世界での戦いというのはあるんですけど、最後はみんなでインターハイを飾りたい。勝山代表として感謝を伝える1年にしたいと思っています」。
好きな言葉は「笑顔の連鎖を巻き起こす」。インターハイで団体優勝を果たし、五輪出場も決める-。そんな最高のシナリオで、地元勝山、そして日本中に笑顔を届ける1年にする。