太田、日本勢史上初の金「夢かなった」
「フェンシング世界選手権」(16日、モスクワ)
フェンシング男子フルーレの08年北京、12年ロンドン五輪2大会連続銀メダリストの太田雄貴(29)=森永製菓=が16日、男子フルーレ個人の決勝トーナメントを制し金メダルを獲得した。日本勢の大会制覇は全種目を通じて史上初の快挙。
準々決勝で12年ロンドン五輪覇者の雷声(中国)を破り、決勝ではアレクサンダー・マシアラス(米国)に勝った。太田は来年のリオ五輪を集大成と位置付け、同五輪後の引退を示唆した。
そわそわしながら表彰台の一番高い場所に立った太田は、まぶしく光る金メダルを首にぶら下げて君が代を聞いた。「夢がかなった。一つ目標を達成した。言葉にできない」。08年北京五輪も、12年ロンドン五輪も銀メダル。これまで手が届かなかった“世界一”の称号を手にし、万感の思いが口を突いた。
圧巻の戴冠劇だった。準々決勝でロンドン五輪王者の雷声を破り、一気に勢いに乗った。決勝のマシアラス戦では「簡単に下がると相手のアタックを全部もらう。できるだけ距離を短くして下がることだけを考えた」と、絶妙な距離を保った。持ち前の素早く巧みな剣さばきでポイントを取り、最後まで流れを渡さなかった。
ロンドン五輪の団体で銀メダルを取った後に休養。約1年間実戦から遠ざかったが、「心の底から命を懸けた試合がしたい」と、リオ五輪に向けて復帰を決めた。以前とは違い「筋力やスピードでは勝たない。あくまでフェンシングをする」と戦略面を徹底的に追求。相手の研究を重ね、多くの経験を血肉として力を発揮した。
この優勝で16年リオデジャネイロ五輪に向けたポイントも大きく上積み、4大会連続の夢舞台は一気に近づいた。11月で30歳となる。試合後には「とりあえず今はリオで一区切りだと思っている」と、リオ五輪を最後に現役を引退する意向を示した。自身が最終プレゼンテーションに登壇するなど招致に尽力した20年東京五輪への挑戦は頭にない。
集大成となるリオ五輪まで、あと約1年。狙うは当然、金メダルだけだ。「自分の一番いいところが見せられたら」。日本が誇る天才剣士が、最高のフィナーレに向けて突き進む。